『ゴールデンタイム3 仮面舞踏会』/竹宮ゆゆこ [アスキー・メディアワークス]
帯に「天然系ラブラブな日々がはじまる!」とありましたが。いや、それだけで終わらないのが竹宮ゆゆこのすごさですね。一体物語がどう転がっていくのか。
はれて彼氏彼女の関係となった記憶喪失男・多田万里と、自称完璧なお嬢さま、加賀香子。
幕が開けた二人のラブラブな日々は、天然だったりやっぱり完璧至高だったり。一方で、万里は過去の関係が白日のもとに晒されたリンダとは真っ直ぐ向き合えずにいた。
そして凹んだ男が一人。柳澤光央は一年生会での盛大な自爆のため深く落ち込んでおり、そんな彼を励ますために万里の部屋でお泊まり会的イベントが発生するがーー!?
竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る青春ラブコメ、第3弾!(紹介文より)
サブタイトルが意味深だったけども、さほど本編と関係なかったと思いますが。とはいえ、内容はなかなかにシリアス。前半は万里と香子のラブラブな日々の描写に、こっぱずかしくなりつつ、幸せをもらえるような感じがしていました。「初体験は○○で」というところなんか、もう苦笑いで「爆発しろ」と言いたくなるような。この幸せな時が、二人にとって「ゴールデンタイム」なのでしょうね。
ただ、記憶を失った万里が向き合わなくてはいけないこと。それがリンダとの過去。記憶を失う前の万里はリンダが大好きで、告白までして。結局リンダの答えを聞くことなく、記憶を失ってしまったわけですが。そして、「今の多田万里」はリンダのことを知らず。加賀香子という一人の女性と出会い、彼女に恋をし、彼女と思いが重なり恋人同士になりました。ただ、「今の多田万里」と共にあり続ける「かつての多田万里と呼ばれていた記憶」はリンダを思い続けていて。
加賀香子を好きな「今の多田万里」の思いと、林田奈々を好きな「かつての多田万里」の思いの相違が物語に関わってくるのかなぁ、と思っていたら。やはりそう来ましたね。
最後の展開は怒濤の展開で、思わずうなってしまいそうでした。リンダはリンダで、万里が好きなんでしょうが。ただ、万里が死にそうになった時、自分は何も出来なかった。そばにいることが出来なかった。でも、助かって欲しかった。何を引き替えにしても。そして万里は助かった。万里とリンダが本音をさらけ出す場面でも現れていますが、万里が幸せでいられるのなら、自分の恋心も隠していていい、と思っているようです。これがまさに仮面なんだろうなぁ、と。ただ、この思いをいつまで仮面の下に隠しておけるのか。
香子は、とにかく幸せいっぱい。本当に万里を愛していて、万里も香子を愛していて。ハッピーを満喫しているところですが。ただ、今までずっと光央を追いかけて、完璧な人生を設計してきた香子にとって、今の状況ってのは初めてのことなんですよね。今まで、好きな人に思われる、と言うことがなかった。それ故に、相手のちょっとしたことが気になってしまう、というところでしょうか。最後のあの場面。消えたあれを持って行ったのはおそらく、というか間違いなく……。相手を疑いたくない。でも、疑ってしまう。不安になる。そんな自分に戸惑って、嫌になってしまう。その気持ちを仮面の下に隠したいのに、今まで自分の本音を相手にぶつけてきた香子には出来ないのでしょうね。はたして、彼女は自分の気持ちにどうやって折り合いをつけるのか。
そして、万里。遂に、遂にその時が来て。この場面を最初から想定して物語を綴ってきた竹宮ゆゆこという一作家に敬服したい気持ちです。違う少女を好きな二人の自分の思いが、どのような混沌を物語に与えていくのか。
コミカライズも決定と言うことで、勢いに乗っている感じがします本作品。この3巻のラストの展開。遂に来たこの瞬間に、今後が一体どうなってしまうのか予想が出来ず、どんな修羅場が待っているのか想像できず。ひたすら続きが気になる展開になっています。ちょっぴり大人のラブコメ、といった風情ですが、どこまでの展開を見せるのか、今後に期待です。
なるほど、残酷な運命といいますか、
ちょっと重たい感じですね。
これで完結しているのでしょうか。
by ロック (2011-08-14 13:30)
ロックさん、コメントありがとうございます。
前半はわずかに思いながらも、恋人のラブラブっぷりにほほえましかったのですが。
後半は一気にきた感じです。
完結はまだしていませんよ。
そんなに長いシリーズにはならないのではないかなぁ?とは思いますが。
次は一つの山場にもなりそうです。
by takao (2011-08-14 13:55)