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『回る回る運命の輪回る -僕と新米運命工作員-』/波乃歌 [アスキー・メディアワークス]

表紙とタイトルに釣られて購入しました。第17回電撃小説大賞第4次選考作らしいですが、なるほどいいところもありますが惜しいところもある作品だなぁ、と感じました。

回る回る運命の輪回る―僕と新米運命工作員 (電撃文庫 な 15-1)

回る回る運命の輪回る―僕と新米運命工作員 (電撃文庫 な 15-1)

  • 作者: 波乃 歌
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫

 

お菓子作りが得意なこと以外、大体平均ちょっと下。どこにでもいる高校生……だったはずの少年、野島浩平。

しかし彼の前に現れた美少女工作員ノアは、浩平こそが運命を狂わせる存在《イレギュラー》なのだと告げ、さらにはなぜか浩平の『弟子』になるといいだしてすっかり家に居ついてしまう。

浩平の常識とは全く違う感覚をもつノア。そんな彼女と過ごす日々の中で、浩平の運命は少しずつ動き出してーー。

第17回電撃小説大賞4次選考作。読むと少しだけ強くなれる。明日への小さな一歩を踏み出すための物語。(紹介文より)

 

まず文章ですが、なかなか読みやすいと感じました。凄く凄く丁寧に文章を綴って仕上げた、という印象。文章にクセもなく、引っかかることがなく読むことが出来ました。そこはよかったのですが、読みにくいところもありました。事件が起こって、そこで主人公が意識を失うなりしてその場面が終了。事件がどうやって解決したかが明かされるのが次の段落の始め、という書き方になっている部分がありました。もちろんそれ自体は小説の書き方として見られることであるのですが、この部分が読みにくい、という感じがしてしまいました。自分の読む能力の低下と言われたらそうなのかも知れませんが。この部分が少し引っかかってしまいました。

設定についても、うまく生かし切れていないなぁ、という印象。この世の運命を正しい方向に導くための組織。それがソサエティ。その新米工作員であるノア。このソサエティという組織。主人公が事故から一瞬先の未来をのぞき見ることが出来る力を得た、など設定としてはなかなか面白いと思いました。が、主人公のこの能力の発現条件が、自分が危機に陥った時という制約があるために、発現シーンが少なかったなぁ、と。ラストシーンではそれがうまく生かされていましたが、この能力を生かした場面が後何シーンかあるとよかったのではないかなぁ、と感じました。

それと、キャラクター。もちろん、そうでない作品も(少ないながら)ありますが、ライトノベルの最大の売りになるのは、登場人物のキャラクター性だと思います。そのキャラクターが如何に魅力的かが重要なのですが、この物語の登場人物のキャラクターが薄味に感じてしまったんですよね。特にヒロインのノア。印象としては、現れて、いつの間にか消えて、最後に気づいたら戻っていた、という感じでした。特にラストシーンについては「?」という感じでした。ノアもキャラクターとして、悪くないと思うのですが、この作品だけ読むと、物語の説明役、という印象がないわけでもありませんでした。ここを生かし切れなかったのが痛かったなぁ、と。

運命の解釈の仕方はなかなか興味深いモノがありました(特にイレギュラーの解釈の仕方)。物語も基本の部分をしっかりと押さえられており、クライマックス部分はなかなか読み応えがあり、面白く感じました。心がほんの少しだけ温かくなる物語、という感じでしょうか。それ故に、「あと少し」という部分が目立ってしまたのが残念に思います。なるほど、第4次選考作というのも分かるかなぁ。

この作品自体、完結していますが続けようと思えば続けられる形となっています。個人的には、今回気になった点が解消されることを期待して、続きも読んでみたいなぁ、と感じました。


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コメント 2

cherryh

気になっていて、読もうか読むまいか悩んでいるんですが、微妙な評ですね・・・

by cherryh (2011-08-14 11:23) 

takao

cherryhさん、コメントありがとうございます。

いや、面白いことは面白いんですよ。
ただ気になるところも多くて、手放しで「面白い!」と言えない感じです。
何でしょうね、『根暗少女は黒魔法で恋をする』の1巻で感じたような、「面白いんだけども、何か足りない」という感じがしました。
by takao (2011-08-14 11:31) 

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