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『とある飛空士への追憶』(新装版)/犬村小六 [小学館]

劇場版アニメ公開に合わせて、文庫版に加筆修正を加えたモノが新装版として発売。久しぶりに読みましたが、やっぱり面白かったです。劇場版が楽しみだ。

とある飛空士への追憶

とある飛空士への追憶

  • 作者: 犬村 小六
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/08/09
  • メディア: 単行本

「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃 ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!? 圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャル ルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!  蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。(小学館『とある飛空士への追憶』webページより)

 

『とある飛空士への追憶』を読むのは3回目だと思います。本当に大好きな作品で、アニメ化して欲しいなぁ、と思っていたので劇場版になったのはとても嬉しく思います。そして、ここで新装版のリリース。劇場版前に復習がてら読んでみましたが、「やっぱりいいなぁ」と感じました。最後はやっぱり涙ぐんで。本当にいいお話だと思います。

読んでいて感じたのが、構成が面白くなるように適度に配置されていること。物語の始まり。空戦。身分の離れた二人の数日間の安らぎの時間。そして、別れ。どの場面も長すぎることがなく、性急でもなく。ちょうど良いところで次の場面が来て、読者が飽きることなく読み進めることが出来るようになっていると感じました。

そして、この物語。身分の離れた二人の恋の物語であるとともに、ファナの変化の物語であると感じました。特にファナの変化が顕著だな、と。自分が贈り物と言う意識が心に根を張ってしまったために、どこか現実の世界に実感を感じる事ができなかったファナ。その彼女が、シャルルと出会い(再会し?)、空の旅を通して元の自分を取り戻して、そして「西海の聖母」と呼ばれるまでのカリスマ性を手に入れるまでの。一種「成長」とも呼んでいいような、そんな変化が読み取れました。彼女が人生を通して為す成果。その全ては、このたった数日間の空の旅の影響だったのだ、というのがハッキリ分かり、感慨深いモノを感じました。

物語の展開や内容自体、オーソドックスだと思います。しかし、その分安心して、楽しんで読むことが出来ました。

さて、加筆修正部分ですが。基本的に所々加えられている程度かなぁ、という感じがしました。特に目立った変化としては、

○千々石飛空中尉 → 千々石武夫特務中尉に修正。

○千々石の一人称が「わたし」から「おれ」に修正。

○真電の機銃が「20ミリ」から「30ミリ」に修正。

○シエラ・カディス島のキャンプの内容が加筆。

○ファナがシャルルの母から途中まで聞いていた話の内容が、物語の最後にふさわしい内容に修正。

○別れのシーンでの二人の心情が加筆。

○終章前半に、ファナが皇紀として為したことを加筆。

と言ったところでしょうか。細かいところだと、唐突でつながりがないように感じられた会話を修正したり、といった感じでしょうか。物語の展開自体は変わっていませんが、一般書籍として発売されることと、劇場版公開に合わせて加筆修正が行われた、という感じです。千々石に関しては、『とある飛空士への夜想曲』執筆に当たって、増えた設定の影響、という感じがします。しかし、

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)

  • 作者: 犬村 小六
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/07/20
  • メディア: 文庫

この千々石(左)、「女と見まがうような端正な顔をした飛空士」(P.36)かな、と思ったり。千々石に対して、どうも違和感を感じていたのですが、再読してその理由が分かったような気がします。

ラストシーンのシャルルとファナの気持ちに関しての加筆。シャルルに関してはファナへの思いが強く感じられるようになっていて、ファナに関しては、この物語の旅が如何に彼女にとって支えになろうとしているか感じられるようになっていると思います。より感動的になっているかなぁ、と感じました。

ラストに描かれた一文。どう解釈するか難しいところです。『とある飛空士への恋歌』を読了しているので、ある予想も立つのですが。ただ、それがいいことなのか、といわれると悩むところであります。この辺、読者の想像に完全に任せているのでしょうね。

再読して、改めて物語のすばらしさを感じました。今回の新装版で、ライトノベルに拒否反応を示す人でも手に取りやすくなり、ライトノベルに興味のない層にも手にとってもらいやすくなったかな?と思います。劇場版も公開されますし、是非とも多くの人に読んで貰いたいです。


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つるぎうお

とある飛空士のシリーズは読んでみたいと思っていたのですが、積み本が多すぎて。手を出す時間が。

by つるぎうお (2011-08-15 19:19) 

chokusin

読んだのがもう三年前で細かい部分は忘れかけてますが、文庫版からの加筆修正はあまり多くないんですね。続編等が書かれる中で生じた矛盾の解消の意味もあるんでしょうが。

劇場アニメ公開に合わせてアニメ用のキャラクター等を図柄に使用するのかと思っていたんですが、むしろその色を消す方向を選択したのは意外でした。
by chokusin (2011-08-15 20:30) 

カルディア

PV見て劇場へ行こうかなと思っているところですw
なので記事内容はちょっとスルーさせていただきましたが、
加筆版を改めて読むほどの面白さなら期待できそうですね。

by カルディア (2011-08-16 02:37) 

takao

つるぎうおさん、コメントありがとうございます。

『とある飛空士」シリーズ、ロマン溢れて凄くいいですよ。
『追憶』は爽快感ありますし。
『恋歌』は涙涙で、最後の美しさがとても素晴らしいです。
積み本、私もたくさんなのでどんな感じか分かりますw
なので、もし機会があったら読んでください。
by takao (2011-08-18 00:03) 

takao

chokusinさん、コメントありがとうございます。

Twitterでお答えしましたが、もう一度。
私が読んだ感じ、既読の方が「ん」と感じるところは多くないと思います。
読書メーターによると、朝起きたら息子元気、のシーンが削除されているようですので、矛盾の修正とともに、ターゲットを一般の読者に写した時に気になるところを訂正した、という感じかと思います。
あとは、ラストの盛り上げですね。

イラスト、ラノベ版とマンガ版と映画版、それぞれ微妙に違うような気がしますw
映画版が一番年相応、という気がしますw
by takao (2011-08-18 00:09) 

takao

カルディアさん、コメントありがとうございます。

どちらかというと、私は「どの程度加筆修正が入っているか」を確かめたかった、という気持ちが大きいかも知れません。
もちろん、読み返したかった、という気持ちも大きいですが。
原作を再現してくれるんだったら、劇場版は素晴らしいモノとなると思います。
劇場版のネタバレ感想、楽しみにしていますw
by takao (2011-08-18 00:12) 

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