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『アイドライジング!3』/広沢サカキ  [アスキー・メディアワークス]

(あらすじ)
モモたちの通う鳴谷鶯高校の学園祭が始まった。張り切るモモだったが、先輩アイドルのタキ・ユウエンがやってきて、ウキウキは一点。前回の『貸し』を盾に迫る彼女に押し切られ、モモは学祭期間中ずっとタキとデートしなければならないことに。さらに学祭のイベントで発生したトラブルにより、モモはアイドルとしても大きな壁にぶつかり……!?
『皆さんお待ちかね!!鳴谷鶯の学園祭と全く同時期に行われるイベントと言えば!?そう、クイーンの称号目指してアイドルの最高峰・オペラ・オービットが戦うエリザベス予選!!本日の試合は--な、なんだあいつは!白銀のバトルドレスをまとう謎のアイドルが颯爽と登場っ!!果たしてその正体は!?』(紹介文より)

(感想)
今年の新人賞デビュー組で一番のお気に入り(というか、これしか読んでいない)の『アイドライジング!』の3巻がいよいよ登場。順調なペースで出ている印象で、ファンとしては嬉しい限りです。そして、本編はモモの、そしてタキ・ユウエンのターニングポイントとなりそうな内容でした

エリザベス予選は、オペラ・オービットの3人が、クイーンのマツリザキ・エリーに対する挑戦権をかけて戦うイベント。アイドル駆け出しの主人公・モモには直接的には関係ないイベントでありますが、そこをどう絡ませてくるのか、と思っていたら。割とストレートな展開で来たなぁ、という印象です。

意外だったのが、学園祭パートの分量の少なさ。2大イベントが同時期に開催される、という事もあったのですが、ちょっと吃驚です。この辺は、作品としてはあくまでも主題は「アイドライジング」の舞台における、少女たちの戦いと成長の物語なんだよ、という事を示しているのかな、と感じました。

この巻のテーマ、一言で表すと「成長」だと思います。元々、実家で買っている牛を自分で買い取るために始めたアイドライジングという戦い。その必要がなくなったのですが、それでもアイドルを続けることにしたモモ。しかし、それ故に彼女には、「自分が何のためにアイドルをしているのか」という芯がない。しかし、今後物語を紡ぐ上で、モモがそこに気づき、成長することが必要不可欠。そう、物語の進展のためにも必要な、モモの成長を描いたのがこの巻でした。

その答えも、自分が一人で見いだす、というのではなく、周りの人たちによって見つける、というのがいかにもモモらしい展開かなぁ、何て思いながら読みました。新人アイドルとして期待している人。ライバルとしてある人。クラスメイトとして応援するもの。たくさんの人に支えられて、確かなものを胸にアイドルとしての道にさらなる一歩を踏み出したモモは、まさにアイドルと呼ぶべき存在なんだろうなぁ、と思いました。

そして、この下りでのオリンがかっこよすぎて、惚れてしまいそうでした。あくまでもメインはモモとタキだったはずなのに、いいところはしっかり持って行くオリンさんが素敵です!

そして、タキ・ユウエン。自分がよかれと思って行った行為が、自分の思った以上の自体を引き起こしてしまったことから逃げ出しそうになりながら。しかし、相手の思いを真っ直ぐに受け止めることで、ここに来て彼女もまた一つ成長したように思います。エンターテイナータイプのアイドルである彼女の、あの発言がまさに彼女の成長の証ではないでしょうか。彼女の決意によって、物語に大きな波が起こりそうな予感がします。アイザワ・モモ、ハセガワ・オリンのメインの二人に、オペラ・オービットのムラサメ・キジョウ。もちろん、現クイーンのマツリザキ・エリーがそれをおめおめと許すとは思えません。さらには、今回名前と波があること自体は分かったものの、今だ謎のベールに包まれたオペラ・オービット最後の一人、ウルシダニ・ユカリの存在も気になるところです。さらに、オペラ・オービット常連であるというミハル、ツバキという存在も気になるところ。この辺が今後入り乱れて、激しいぶつかり合いを見せる展開になるのかなぁ?という事を予感させてくれました。何とも楽しみです。

また、なにげに新ドレスが出てきたのも気になるところ。そうか、ドレスの性能が分かっている上で、どう物語を見せるのだろう、というのが気になるところの一つだったのですが、「新しいドレスを出す」という方向性もあるのだなぁ、と思いました。オリンはないでしょうけども、モモに新しい性能のドレスが渡るのか。中盤でのパワーアップはお約束ですが、この作品では一体どうでしょうか。気になるところです。

作者あとがきを見ると、本作はスランプだった、ということですが。果たして、産みの苦しみを味わった分、素晴らしいできになっていたと思います。というのも、2巻までは多少なりとも流れとして気になるところがあったのですが、今回はそれが皆無。文章は読みやすく、内容は理解しやすく。それでいて、読者の心をばっちりつかめるような内容に仕上がっていたと思います。モモがこの巻で一皮むけたとすれば、作者もモモと一緒に一皮むけたのだな、と感じられました。

この巻をもって、いよいよ本編の、本当の幕が切って落とされた、という感じでした。作品としてもレベルが上昇していますし、これは今後がますます楽しみです。
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