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『子ひつじは迷わない うつるひつじが4ひき』/玩具堂 [角川]

(あらすじ)

”なるたま”こと成田真一郎と佐々原は,会長命令で一緒に泊まり込みアルバイトにやってきた。そこは”万鏡館”という名前とは裏腹に一切鏡がなく,中も外も全て白と黒で統一された不思議な世界。なぜかそこから仙波も現れーー!?館の主人である美少女が「鏡を見る」ことを禁じたワケは?そして彼女の不可解な言動に隠された一族の秘密とは!!抜け出せない館で次第に疑心暗鬼に陥る子ひつじたちを救うため,仙波が館の謎に挑む!!(裏表紙より)

 

(感想)

今回は,いつもと違い舞台は学校の外。古くから続いた名家・寄絃家の別荘・万鏡館。そこで待っていたのは,非現実的な世界。そこに秘められた謎。展開も,いつもと違い,万鏡館の名前に秘められた謎を解く,と中心を貫く大きな謎が一つと,なるたまたちを試すための小さな謎が一つと,長篇の趣でした。

何から何までいつもと違う描かれ方をしているためか,いつもと違う『子ひつじ』の世界が描かれていた,と言う印象を受けました。謎自体,いつもだったら,ちょっとズッコケてしまうものがありつつ,と言うイメージがあります。しかし今回物語を貫いていた謎は,どこか幻想的な印象を受けました。

そこにあるのは,理論的には非常に固い,概念的で抽象的な印象。それが,物語全体の幻想的な印象を生んでいたのだと思います。似たような事象を物語の芯に据えたライトノベルがありました(オチについては,違ったものでした)。その作品に比べて,こちらの作品の方がよりミステリアスな感じがしました。「ライトノベルだから,このことを堂々と取り扱えるよね」と思えるもので,「ライトノベルレーベルから出版されている」と言う事を最大限に生かしたないようだったと思います。

キャラクターでは,物語の内容に合わせてか,佐々原の気持ちに大きな変化が生まれているように見えたのが印象に残りました。いつも以上に,なるたまの言動に嫉妬をしていたように感じる展開でした。そして,さらに松宮に投げかけられた言葉から,自分となるたまの関係を改めて見返している,と言うのが,今後の展開にさらなるうねりを生みそうだ,と感じました。

さて,帯で「仙波がついに『デレ』る!?」と書かれていた仙波の方は,いつもとあまり変わらないような印象を受けました。しかし,相変わらず,なるたまの方に意識が向いているところが,いつも以上にその度合いが強くなっているような印象。

そして,なるたま。3巻で両方とも気になる!と言うところでしたが,印象としては佐々原は仲間。そして仙波が気になる女性,と言う印象を持ちましたが。この館に来たことで,やはり彼も自分のあり方を考えたようですが,彼の場合は変わることはなさそうな感じがします。二人への好意については,まだまだどちらにも転ぶようですし,一体どう転がっていくのか,が注目です。

さて,次の巻では舞台を学校に戻すようです。ただ,今回の長編の印象が良かったですし,また長編を読んでみたいな,と思いました。迷わない子ひつじたちがどの方向に向かっていくのか,次も楽しみです。


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コメント 4

cherryh

そうだよねえ、あんまりデレてないよねえ(笑)。

by cherryh (2011-11-13 23:55) 

takao

cherryhさん、コメントありがとうございます。

あれ、全然でれてませんよねw
不安な時に、なるたまがいた、みたいな感じかな?とは思いましたが。
多分煽り、と思いつつ期待していたので、少し残念でしたw
by takao (2011-11-14 00:05) 

nsh1960@twitter

え゙
寝室に戻ってから佐々原に問われてデレた(いいわけくさい説明)ということを大きく取り上げたのをそう表現したと思った。
前巻では分かれてから空腹を口実にしていたけど、それはいいわけにしても苦しいからとの対比でいえばまあそうかなと。
by nsh1960@twitter (2011-11-16 23:26) 

takao

nsh1960さん,コメントありがとうございます。

個人的には,「デレる」というのは,好意を持っている相手に対して,見せる態度のことを言うと考えています。
この巻では,なるたまへの気持ちは少しずつ氷解しているのかな,とは思うところもあります。
しかし,まだまだ「デレる」というところまで来ていないのだと思います。
少なくても,帯で大々的に売り文句にするようなレベルではないと。

もっとも,これは個人的見解ですので,記事にきっちりと明記しておくべきでしたね。
by takao (2011-11-19 17:30) 

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