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『聖剣の刀鍛冶 ♯11.Women』/三浦勇雄 [メディアファクトリー]

(あらすじ)

ルークの変調をリサから明かされたセシリー。ルークは頑なに隠そうとしているが、セシリーとリサは互いに彼を支えることを心に誓う。ルークとの関係をどのようにするべきか悩んだセシリーは母に、亡き父との馴れ初めを聞くことにするーー。一方、軍国ではゼノビアが付き人のシャーロットとともに城を抜け出し、大陸を包む不穏な空気に萎縮しかねない市井の声を聞くべく町中へ繰り出していた。また他方、帝政列集国のフランシスカは、主に従属するヴェロニカから見出そうとしていた……。穏やかな日常の中で覚悟を固めていく女たち、心底に銘を切り、居並ぶ!!(裏表紙より)

(感想)

決死の覚悟でルークの前に立ち、彼の右目から光が失われていることを知る、と言う衝撃的な展開で終えた10巻。それから1年。ようやく発売された11巻は、短編集という形でした。雰囲気も日常の話、という感じで、柔らかい印象。しかし、最後は『聖剣の刀鍛冶』らしさを見せてくれたように思います。

サブタイトルは「Woman」と言う事で、まず4人の女性のエピソードが描かれていました。25-1話が、セシリーの父・チェスター・キャンベルとセシリーの母・ルーシー・ハーグリーヴスの馴れ初めの物語。25-2話が騎士団のセシリーの後輩、ヘイゼル、ヒルダの日常。25-3話が、軍国でのシャーロットの奮闘劇。そして、25-4話が帝政列集国のフランシスカの感情の戸惑いの答えの物語。そして、26話がそれを受けて、セシリーがルークとの関係に答えを出す、と言う構成でした。

とにかく一つ一つの物語のバラエティが豊かでした。恋、日常、ドタバタ、悩み。それぞれがそれぞれで非常に良い味を出していました。10巻の展開を受けて、一体どうなるか、と楽しみにしていたところでこの展開だったので、若干じらされたような印象は受けました。しかし、それぞれのお話が非常に楽しかったので、物語自身を楽しむことができたかな?と思います。そして、どのお話も印象的だったなぁ、と言う感じがしました。

1つ目は、ルーシーの押しの強さに脱帽。この母にして、このセシリーありか、と思わせる内容でした。……が、セシリーはさらに上をいちゃった感がありますがw2つ目は、主人公の周りの人々の物語。悲惨な状況に置かれることが続いていますが、この強さがあればいくらでも立ち直れるのではないか、と感じました。3つ目は、シャーロットの貴族としての資質、と言うものが感じられました。そして、少女王のしたたかさが素敵でした。4話は、フランシスカの意外な一面が見られたのが楽しかったです。しかし、あの言葉での決断。今後強力な敵として立ちふさがるんだろうな、と感じさせてくれました。

そして26話。遂に牙をむく帝政列集国。物語はいよいよ大詰めに向かっているんだな、と言う事を感じさせてくれました。しかし、何よりこの物語で注目すべきは、セシリーの決断でしょう!実に男らしい彼女の行動。そこら辺のラノベ主人公のへたれどもにも見習って欲しい、と思うような実に潔い行動でした。ここまでされたら、ルークも自分の本心をいつまでも隠すことはできないよね、と。とにかく、おめでとう!

そんなこんなで幸せな結末で終えるのか、と思っていたら、エピローグにとんでもない展開が待っていたのが凄かったです。いや、正直この展開は読めていました。しかし、まさかここでそれが打ち明けられるとは。そして、それにも意志があるとは。わずか2ページ、14行の文章でしたが、鳥肌が立つようでした。見せ方が、ここしかない、と言う展開で素晴らしかったです。秘密を秘密のままにしない『聖剣の刀鍛冶』という作品の面目躍如、という印象でした。

と言う事で、10巻からの展開を受けて、肩すかしか、と見せかけて最高の展開を見せてくれたな、と思います。セシリーとルークの関係に答えが出ました。帝政列集国と軍国・独立交易都市同盟の正面衝突が避けられなくなり、それも間近に迫っていることが感じられました。そして、遂にアリア復活の展開の道筋が見えました。今後怒濤の展開を迎えるための、小休止として、非常に意義のある巻だったと思います。

特に、アリア復活の道筋が見えたのは良かったです。いつまでもアリアが復活しないことに、何らかの秘密が絡んでいることは予想できていましたが。予想どおりの展開になってきたな、と言う印象です。そして、シーグフリードはこの事実を知っていたからこそ、銘無しをつくるような実験をしていたのでしょうね。アリアが次に目覚めるとき。一体どんな彼女として復活するのか。非常に楽しみです。

1年間待たされましたが、満足できる内容でした。これが見られたら満足せざるを得ない、と言う感じもしますが。しかし、次はなるべく早く出て欲しいなぁ、と願うばかりです。

聖剣の刀鍛冶  11 (MF文庫J)

聖剣の刀鍛冶 11 (MF文庫J)

  • 作者: 三浦勇雄
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2011/11/23
  • メディア: 文庫

 


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コメント 2

赤眼の魔王

10巻目から1年ですか、早いものですね。

完結にはまだまだ時間がかかるでしょうが、その分だけルークとセシリーの結末が楽しみなりますね。

そして、アニメーション第2期が出来れば、文句なしです。
by 赤眼の魔王 (2011-11-30 17:52) 

takao

赤眼の魔王さん、コメントありがとうございます。

気づいたら1年経っていた、と言う感覚で、時の過ぎる早さを実感するばかりです。
確かに、なかなか11巻が出ないなぁ、と思ってはいたのですが。

完結までに、アリアの復活もありますし、その後、シーグフリードとの全面対決。
そしてヴァルバニルとの決戦と続いていくのでまだまだ完結は先でしょうね。
聖剣が動き出しそうな雰囲気もありますし、それがどう動くかでどの程度のシリーズになるのか変わってきそうな。
ルークとセシリーは、この巻で一つの結末が出たので、次にどう進んでいくのかが楽しみです。

アニメ2機、是非やって欲しいんですけどね。
どうなんでしょう?w
by takao (2011-12-04 00:30) 

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