『ある朝、ヒーローの妹ができまして。』/餅月望 [集英社]
(あらすじ)
普通の高校生・貴樹にはかつてヒーローだった妹たちがいる。超能力者・宇宙人・異世界人と様々な事情を抱えた少女達を、英雄である両親が引き取ってきたのだ。しかしそれは、貴樹にとって当たり前のことで、どの妹もかわいらしく、愛らしいことに変わりはない。今朝も父親から電話があって……また妹が増えた。今度はどうやら未来からの妹のようで…。お兄ちゃんと妹たちが繰りひろげる、愛と感動のストーリー、開幕です。(裏表紙より)
(感想)
ロリロリしたイラストから、ロリコンのきわどいネタの話か、と思って読み始めたのですが。蓋を開けてみると、描写こそ狙っている部分はあるものの、物語の軸となっているのは「家族」。血の繋がらない、しかしとある切っ掛けから出会うことになった少年と少女達の、心が温かくなるような絆の物語でした。
ただ、物語の軸は「家族」なんですが、基本ロリコンものではあります。主人公の血の繋がらない4人の妹たちは、年齢は上が12歳(中1)で、下は5歳くらい?それぞれが、英雄である主人公の両親が養子縁組して、主人公の妹になった、ということになっています。そして、その4人もただの人間ではありません。宇宙人。超能力者。未来人。異世界人(ついでに言うと、竜)と、某憂鬱な作品のヒロインが踊り狂って喜びそうなメンバーと来ています。その中で、主人公だけ、英雄の子どもでありながら、実際は普通の人間、と言うのが楽しいですね。
描写については、なかなかフェティッシュな描写があったり、フェティッシュな設定があったり。洋服からおへそが覗いている描写や、足の描写なんかは、もう完全にこの作者が好きで書いているのだろうなぁ、と感じました。ラストの展開についても、思わず突っ込んでしまいたくなるような、唐突に触手が登場。今までの流れを全く無視したこの登場には、もうあざといまでの意図を感じざるを得ませんでした。
と、この辺は「あざといな」と感じた部分ですが。しかし、物語の軸は「家族」。このアンバランスさ加減が何とも言えない妙だと思いました。今回は、たまたまタイムスリップした未来人・「ゆえ」が、タイムスリップして現れた際に出会った主人公・貴樹と家族として結ばれるまでのお話。地の繋がらない家族が、如何にして家族となっていくか、と言うのがメインでした。240ページ程度という内容のために、多少の展開の早さは否めません。しかし、戸惑う「ゆえ」が、家族という安らぎの場所を知ってしまい、そこに帰って行く、と言う展開は、素直にいい話だと思いました。「ゆえ」と引き離されてしまっても、家族であろうとして、彼女を取り返そうとする貴樹と3人の妹たちの絆もまた、心地よいものがありました。ラストで見せてくれた家族としての絆は、美しいものだと感じられました。
適度なロリ成分と、素敵な絆が絵が蹴れた良質の物語でした。続きが出るか分かりませんが、出るようなら次も読みたい作品です。
ある朝、ヒーローの妹ができまして。 (集英社スーパーダッシュ文庫 も 1-6)
- 作者: 餅月 望
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/11/25
- メディア: 文庫
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