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『神曲奏界ポリフォニカ エイフォニック・ソングバード』/榊一郎 [ソフトバンク]

(あらすじ)

「神曲楽士」と呼ばれる人々が、精霊のために「神曲」を奏で、精霊はそれを糧として人に様々な恩恵をもたらす。
 ここはそんな世界。

 優れた演奏技術を持ちながらも、神曲楽士を目指す事への情熱を失い、流されるようにトルバス神曲学院へ転校してきたラグナスは、そこで驚くべき少女と出会う。
 彼女の名はウリル。誰よりも精霊が大好きで、底抜けに明るく、ひたむきに神曲楽士を目指す女の子だ。

 ところが、実はその明るさは形だけのもの。彼女は音楽を志すものにとってとてつもなく致命的な問題を抱えていて……!?
 榊一郎×カントクが贈る、新世代ポリフォニカ登場!

神曲奏界ポリフォニカ エイフォニック・ソングバード (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカ エイフォニック・ソングバード (GA文庫)

  • 作者: 榊 一郎
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2012/05/15
  • メディア: 文庫

感想は追記にて

(感想)

最近は『這いよれ!ニャル子さん』や『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』が話題になり、だいぶ印象は変わってきましたが、GA文庫と言えば「ポリフォニカ文庫」と呼ばれていたと言うくらい、『神曲奏界ポリフォニカ』シリーズはGA文庫の柱であり続けました。とはいえ、アニメが2本制作され、2本とも微妙な評価。定期的にシリーズを黒シリーズをリリースしていた大迫純一さんの死去ということもあり、注目度はどうなのかなぁ、と思うところがありました。そんなときに、榊一郎さんが、カントクさんと組んでリリースしたのはポリフォニカシリーズの新作。ゲーマガで連載されていたものをまとめたものらしいですが。個人的にはイラストがカントクというところに惹かれて買ってしまいました。

さて、赤シリーズを2冊。クリムゾンSシリーズを3冊しか読んでいない私には、イマイチよく分かりませんが、この作品の舞台はトルバス神曲学院。そして、作者が榊一郎さんということで、赤シリーズの主人公であるタタラ・フォロンとコーティカルテも登場します。しかし、今回この二人はメインではありません。

既存のシリーズで、主人公を変えて新シリーズを作る場合、主人公の変更が非常に難しいと思います。受け手である我々にとって、前作までの主人公に愛着があればあるほど、新しい主人公に愛着がもてないことがあったり、前作の主人公ほど魅力を持たせることが出来なかったり。『ギャラクシーエンジェルⅡ』(アニメ『ギャラクシーエンジェる~ん』)なんかが典型だと思います。

『ゾイド新世紀スラッシュゼロ』のように、前作を過去のものとすることで前作の主人公達を過去の人とする手法もありますが、本作品はそうしませんでした。その場合難しいのは、前作キャラクターの登場人物の取り扱い。空気にしすぎたり、踏み台にしたりするとファンから苦情が来る可能性がありますし、目立たせすぎると新シリーズのキャラが空気になる。非常に難しいところです。

本作ではどうかというと、フォロンは学院の非常勤講師という形で登場。編入してきた新しい主人公・ミタオカ・ラグナスの案内役として登場。講師として主人公達に授業を教える形で主人公達を導く役割を果たしています。また、コーティカルテは、壁にぶち当たる主人公達を、コーティカルテらしいやり方で励まし、道を示す役割を果たしていました。前作のメインキャラクターらしい立ち位置でありつつ、目立ちすぎない、という意味では最高の役回りをしていたように思います。

そうなると問題になるのはそのストーリー。ストーリーに関しては、「これぞボーイミーツガールの真骨頂」と言いたくなるようなストーリーでした。イラストに期待して購入した私ですが、気づいたらそのストーリーに魅せられ、ドンドンページを繰っていました。

今回の主人公、ミタオカ・ラグナスですが、有名な神曲楽士であった叔父の影響で昔から楽器に触れてきた彼は、叔父と比較され周りから期待されてきたけれど、それがプレッシャーとなり気づけば他にやりたいものも、出来ることもないひねくれた少年となっています。そんな彼が編入先で出会ったのが、コガムラ・ウリル。誰よりも精霊が大好きで、精霊を呼ぶ神曲楽士になるために学院に通う彼女。しかし、彼女は生まれたときから耳が聞こえない、という神曲楽士を目指す上での絶望を抱えています。

楽器の才能はあるけれども、情熱を持てない主人公。情熱は誰よりもあるけれども、楽器の才能を持てないヒロイン。この二人が出会い、影響し合い、補い合っていく。一人ではダメだけれども、二人ならできる。そして、二人が周りを巻き込んでいく。これぞまさに王道の物語であったように思います。それぞれのキャラの内面に隠された気持ちに触れた主人公が、明るさを取り戻させるために、夢を叶えさせるために動く姿が非常によかったです。

そして、物語を彩るカントクさんのイラストのすばらしさ。元々雑誌連載だったこともあってか、挿絵はかなり多めだったと思います。元々カラーであったものがモノクロになっているのは少し残念ではありますが、その量は満足でした。(カラーは、『カントク イラストレーションズ 神曲奏界ポリフォニカ エイフォニック・ソングバード』に収録されているらしいです) 

まだまだ主人公達は動き出したばかり。この二人が一体どのような物語を紡いでいくのか。俄然楽しみになってきました。ポリフォニカはまだまだ終わらない。そんな事が感じられる、非常に良質の物語でした。ポリフォニカシリーズのファンはもちろん、ポリフォニカを知らない方達にも読んで貰いたい作品です。

カントク イラストレーションズ -神曲奏界ポリフォニカ エイフォニック・ソングバード-

カントク イラストレーションズ -神曲奏界ポリフォニカ エイフォニック・ソングバード-

  • 作者: カントク
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2011/09/22
  • メディア: 大型本

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コメント 2

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大林 森

おおお!ポリフォニカが復活!(=゚ω゚)ノたしかに最近のGAは
(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!イメージありますねー。( ;´∀`)あっちも好きですけど、この路線も残っててほしいです。(>_<)がんばれー!カントクさんの挿絵もステキ!読んでみたいですー!
by 大林 森 (2012-05-20 20:03) 

takao

大林 森さん、コメントありがとうございます。

実際、ニャル子の原作も出ているみたいですし、ポリフォニカ文庫とは呼ばれないようになっていますね。
とはいえ、この作品、かなり完成度が高くて、「GA文庫の看板は、やっぱりポリフォニカなんだなぁ」と感じるようでした。
これ自体で綺麗に終わっているのですが、まだ続きが出そうですし、どこまで行くか楽しみたいと思います。
by takao (2012-05-21 21:01) 

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