『ゴールデンタイム外伝 二次元くんスペシャル』/竹宮ゆゆこ [アスキー・メディアワークス]
(あらすじ)
竹宮ゆゆこが贈る青春ラブコメ!
三次元に絶望した男──その名も二次元くん。本名は佐藤。大学一年生。
大学でも三次元の女は完全スルー、脳内嫁(名前はVJ。セーラー服で日本刀を持って戦う14歳。好きな食べ物はチョイス)との対話や自作小説の執筆に明け暮れていた。
そんな彼へ三次元からの刺客が現れる。
中学時代の後輩──魔性の秋。雰囲気のある美少女で、思わせぶりな微妙すぎる距離感をもって接してくる。
大学の同級生──同人戦士・愛可。二次元に生きる者同士の共感を武器に二次元くんに迫りくる。
さらには天然チャラ男の友人・江別までもがハーレム合コンを武器に揺さぶりをかけてくる。
はたして二次元くんは二次元への想いを貫けるのか!? 心の彷徨を鮮やかに描く二次元叙情巨編!(電撃ドットコムより)
ゴールデンタイム外伝―二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)
- 作者: 竹宮 ゆゆこ
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2012/06/08
- メディア: 文庫
感想は追記にて
電撃文庫で好評刊行中の『ゴールデンタイム』。その中の登場キャラクター・二次元くんに焦点を当てた外伝が登場です。『とらドラ!スピンオフ』の時もそうだったのですが、あえて主人公のすぐ腋のキャラではないキャラを主人公にして物語を展開するのが見事だと思いました。今回は、主人公の友だち、強烈な個性をもちながら、話にさほど深く関わってきていない二次元くんが主人公です。
物語は4つのエピソードから構成されています。その中で、二次元くんがどうして二次元の中に生きることを決めたか、それでも三次元に惑わされてしまう様子が描かれます。最後に、彼は一体どんな結論をだすのか。それがこのお話の見所だと思います。
何より面白かったのは、本編では二次元道を真っ直ぐに進んでいるように感じていた二次元くんが、やっぱり三次元に惑わされたりのめり込んだり。確かに生きている一人の人間と感じられたことです。今回の表紙になっている二次元くんの二次元嫁、ブリジット・ジェオミリア(通称VJ)ですが。読んでいて、明らかに三次元の、自分の知り合いの影響を受けているのが読み取れ、それが興味深い点でもありました。
1話では二次元くんの後輩の話。2話では二次元くんと知り合った同級生との話。そこで戸惑いが生まれたのが3話。そして、結論を出すのが4話。という感じで、どことなく氏のデビュー作である『わたしたちの田村くん』を思い起こさせる展開でした。懐かしさを感じると共に、安心感も感じられました。
あとがきに「書くのが楽しいから!(自分が)」ということで電撃文庫マガジンに掲載されていた、ということですが、作者の楽しさが伝わってくるようで、本当に楽しかったです。二次元くんが、本当に痛くて、痛くて、痛々しくて、危うくて。だからこそ、ついついのめり込んで、応援したくなるようなお話。本編が、複雑な恋愛模様を描いた物語ならば、外伝は不器用な青年の青臭さ全開の、苦闘の軌跡、という印象でした。
『ゴールデンタイム』本編を読んでいない人でも、十分に楽しめる内容でした。おすすめしたい作品です。
面白そう!私は竹宮先生のスピンオフは楽に読めるのでうれしいですねえ。(*´ω`*)先生の一気に読ませてしまうテクもすばらしいといつも思ってます。
by 大林 森 (2012-06-20 06:37)
大林 森さん、コメントありがとうございます。
今回の外伝は、二次元くんをどう捉えるかで結構感想に差があるような気がしています。
私としては大変面白かったですが、イマイチ、って人も。
感想に書くのを忘れましたが、ゆゆこさんは、キャラクターの抱えているものを別のものにたとえて(今回は海苔)描くのが巧みだなぁ、と感じました。
感心させられるばかりです。
by takao (2012-06-23 19:47)