とらドラ10!/竹宮ゆゆこ [アスキー・メディアワークス]
いよいよクライマックスを迎えることになった本作。前巻で大河とともに逃げ出した竜児ですが、果たしてどのような結末を迎えるのか。
大好きなシリーズが終わるのはやはり感慨深い物があります。終わってしまう充足感と、終わってしまった虚脱感と両方味わえる。何とも言えない気分です。『とらドラ!』も大好きだっただけに、続きが待ち遠しかったのですが、終わってしまうのはやはり寂しかったです。
さて、前作のテーマは個人的に「破壊」かと思ったのですが、今回のテーマは「再生」だったと思います。今作は、竜児が未来に歩き出すためのステップだったと思います。
タイトルどおりの、とらドラルートだったわけですが、個人的には良かったかな、と思います。「あれ、ばかちーのターンが来ないよ?」とか「ばかちー、竜児が好きだったんじゃないの?」とか若干の不満はありましたが。ばかちーの行動原理が5行で説明なのはなぁ。もっと、赤裸々な告白シーンが欲しかったです。せめて、後1巻あれば、といったところでしょうが。
閑話休題。ばかちーの扱いは多少不満なものの、竜児と大河の場面は大満足でした。まず、前半の山、告白シーン。かなりのツボでした。まさか、竜児があそこまで言うとは。案外男らしいところを見せたのではないかと。そして大河。最後の最後、あそこまでデレるとは思わなかったです。いや、北村にはその面を見せていたとは思うのですが、竜児にも同様に接するとは思いもしませんでした。てっきり、今まで同様に不遜な態度を続けるのかと思っていただけに、告白シーンとラストシーンなんて、別人じゃないかと思いました。今まで、幸せを求めることをできず、自分の本当の恋心に気づいた後も自ら身を引こうと考えていただけに、気持ちが爆発したのかな、と思います。ラストの場面は、アニメで完全再現してくれたら、号泣する自信があります。ええ、アニメ21話3回見て3回泣いてますし。というか、6巻以降の展開が好きすぎて、毎回泣いている気がします。年取ると涙脆くなってきたというのもあるのですが。
再び閑話休題。それと同様に良かったなぁ、と思うのは高須家のシーン。前巻が前巻なだけに、竜児と泰子はもう修復不可能かとも思ったのですが、元通りに戻って良かったです。親の心子知らず、というか、子の心親知らずというか。結局、ちょっとしたボタンの掛け違いだったのですね。まあ、泰子があそこまで考えているとは思わなかった。そして、あの状況からそのまま逃げ出す、という選択をせず、家族関係の修復を望んだ竜児が素晴らしいと思いました。なかなか、その選択をすることはできないように思うのですが。今回のことがきっかけで、親子の絆がますます強くなったのではないか、と思います。
最後まで味わうように読んだのですが、本当に良かった。最悪、みんな誰とも結ばれない絶滅エンドか、とまで予想していたので、決着を迎えられたのは非常に良かったです。折に触れ、感動もしましたし。なにより、243ページの挿絵がすべてを象徴しているようで、これだけで泣けそうです。何より、これで安心してアニメの最終回も見ることができます。竹宮ゆゆこ氏、お疲れ様でした。そして本当におもしろい作品をありがとうございました。次回作も非常に楽しみにしたいです。
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