パララバ -Parallel lovers-/静月遠日 [アスキー・メディアワークス]
ちょこちょこ読み進めて、1ヶ月くらいかけてようやく読み終えました。やはり、女性の一人称視点の話しことば口調の文体は苦手だ、と改めて実感。とても面白かったのですが。
タイトル、どういう意味だろうと思ったら、Parallel lovers(パラレルラバーズ)、略してパララバなのですね。私はこういうタイトルの付け方は好きです。まあ、「つまらん」と言う人もいるでしょうが。
久しぶりにあらすじを。
遠野綾は高校二年生。平凡な日々を送る彼女の一番の幸せは、部活を通して
知り合った他校の男子生徒、村瀬一哉と毎日電話で話すことだった。何度も電
話をするうちに、互いを友人以上の存在として意識し始めた二人だったが、夏
休みの終わりに一哉は事故死してしまう。本来であれば、二人の物語はそれで
終わったはずだった。
しかし一哉の通夜の晩、綾のもとに一本の電話がかかる。電話の主は死んだ
はずの一哉。そして戸惑う彼女にその声は告げた。死んだのはお前の方ではな
いのかと……。
二人が行き着く真実とは!? 出会えぬ二人の運命は!?
携帯電話が繋ぐパラレル・ラブストーリー。切なさともどかしさが堪らない、
第15回電撃小説大賞<金賞>受賞作。(紹介文より)
パラレルワールドは大好物なので、非常に惹かれました。で、この二人をつなぐのは携帯電話のみ。帯で高畑京一郞氏も書いていますが、『この切なさともどかしさが、堪らない』です。
大賞の『アクセル・ワールド』が少年漫画的な、勢いと熱さの作品なのに対して、この作品は非常に丁寧に作られた、上質な物語と感じました。考えてみれば、去年の金賞の『きみのための物語』もこんな感じでした。で、個人的には『アクセル・ワールド』よりも好きかなぁ。『アクセル・ワールド』も好きですが。去年も大賞より金賞の方が好きでした。まぁ、第一回からして『オーキ伝』より『クリスクロス』の方が好きでした。だからなんだ、と言われたらそれまでですが。
閑話休題。上にも書きましたが、とにかく丁寧に書かれている、と言う印象でした。少しずつ謎を解いていき、それが一つの真実に向かって収束していく様は非常に見事。最後は怒濤のように謎が明かされていき、非常に良かったです。文体苦手で、なかなか読み進めることが出来なかった私も、解決編に入ってからは一気に読むことが出来ました。
素直に、作品のおもしろさで勝負しているところもかなりの好印象。最近のライトノベルはキャラクターで勝負、という面が強いと思います。もちろん、それを否定はしませんし、私自体嫌いではありません。ただ、見所は強烈なキャラクターだけ、という作品があるのも事実。ところが、この作品は強烈な個性を持ったキャラクターが少なく、とにかく内容で勝負していると思いました。そして、内容で十分勝負できているのが素晴らしいと思いました。
また、ラストも良かった。こういう作品では、恋人同士の再会とか、復活とかがありがち。ところがこの作品では復活は当然としても、一瞬の再会もありませんでした。このことが、切なさを強調するようで、良かったです。
と、大変素晴らしい作品でした。あとがきによると『タイム・リープ』に衝撃を受けて、『タイム・リープ』のような作品を書きたい、と思い、書いたとのこと。無駄のない、と言ったところまではいっていないと思いますが、その願いどおりの作品が書けていたと思いました。正直、『タイム・リープ』と同じように、ハードカバーで出しても良かったかも。まあ、そうしたら売り上げ減りそうですが。次回作も非常に楽しみです。
……でもなぁ、期待していた去年の金賞の人のあれ(『静野さんとこの蒼緋』)はイマイチだったんですよね。そこがちょっと不安。
余談。しかし、どこで読んだか忘れましたが、最近、メディアワークスに『タイム・リープ』読んで
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