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「致命傷」って死んでない? 『読書の時間よ、芝村君!』 [一迅社]


読書の時間よ、芝村くん! (一迅社文庫 に 2-2)

読書の時間よ、芝村くん! (一迅社文庫 に 2-2)

  • 作者: 西村 悠
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2009/03/19
  • メディア: 文庫



『ANGEL+DIVE CODEX』の中に入っていた3月のご案内の紹介文。「本の中に入る」「西村悠が贈る名作小説・冒険ファンタジー」という文言に惹かれました。今回学んだことというのは、本買うときは、紹介文とか表紙とかだけじゃなくて、作者の既刊作品をチェックする、と言うことですね。

出だしは凄く良かったです。扉絵で「今更ビキニアーマー」とか思いましたけど。そう、『早崎夏耶の昔のこと』までは。個人的に凄く好みの展開でした。一人で俄に盛り上がったのですが、その数ページ後に見事に裏切られることになるとは思いませんでした。

あとがきには、「この物語の出発点は『物語のおもしろさ』を書く」ことだったとあるのですが。物語の性質が凄く中途半端な感じがしました。シリアスとコメディの部分がなんか気持ち悪い感じで、中途半端に混じり合っている感じ、と言ったところでしょうか。別にどっちかにふらなければいけない、と言うことではないと思いますが、何か気持ち悪い感じが。ストーリー展開としてはシリアスなのに、ギャグ体質のキャラに、ノリ重視の表現というか。

で、読み進めていったら、タイトルのような感想にぶち当たりました。主人公の一人、春奈が冒険を始めたときに失敗続きで「致命傷を負って苦痛にあえいだことも」(P.124)とあったのです。で、気になって調べてみました。広辞苑第5版電子ブック版によると、

ちめい‐しょう【致命傷】‥シヤウ(1)死の原因となる傷。「―を負う」(2)転じて、再起ができないようになった原因。「決断の遅れが―になった」

だそうです。えっと、死んでないし、再起不能でもないですよね。いまだに冒険してるし。なんだか、凄く気になりました。

それと、もう一つ気になったのが、春奈が物語に填った理由。簡単に言うと、自分が不倫の子で、母親に引き取られたけど母親自殺しちゃって、で、他人と関わるのが怖くなって、本を読んでいるときは自分を忘れられるから物語の世界に逃げ込んだ、というもの。多分、『SH@PPLE』の4巻あたりだったと思いますが、似たような設定のキャラがいたなぁ、と思ったり、某お笑い芸人のひょろいほうが高校時代、こんな感じの人間だったらしいなぁ、とか思ったのですが、それはどうでもよく。気になったのは、読書に填るきっかけ。作者自身、「逃避」のための読書があったそうなので、こんなキャラになったような気がするのですが、こんな消極的読書姿勢というか、そんなキャラが多いような気がします。ラノベ自身、ネガティブな設定をつけたがるのも影響あるかも知れませんが。

まあ、ラノベばかり読んでいる私が言っても説得力ありませんが、私の場合は本を読むようになったのは、それが純粋に面白かったからです。多分、本格的に填るきっかけだったのが、北村薫氏の『スキップ』や覆面作家シリーズだったと思います。で、そのおもしろさに惹かれて、まあ、途中かなりブランクがあったりしたものの、今でも読書を続けていたりするわけです。かくいう私にとって、読書はエンターテイメントの一つ。読んだ方が良いと思うのですが、別に楽しくないなら無理して読まなくても良いし、好きならいくらでも読めばいいと思います。映画なりスポーツなり、もっと好きなことがあればそちらに時間を費やすべきだと思うし。だからこそ、まあ、今は楽しんでいるのでしょうが、この消極的姿勢が気になりました。

そもそも、自分たちが楽しい読書の時間を提供するために、本を書いていると思うのに、本の中のキャラクターとは言え、こんなネガティブに読書に親しんでいたキャラを出すのはどうだろう、と思います。本を楽しんで欲しいからこそ、本が面白くて好きだから読書する、と言ったキャラを出すべきではないかと。と考えていたら、結局それは『ラノベ部』になるのか。まあ、でもそっちの方が良いなぁ、と思いました。

良かったのは、夏耶のキャラくらいかなぁ?でも、幼なじみ属性を持っている人間って、少ない気がするんですよね。それに、幼なじみ属性所持キャラは、大体の物語において、破れている気がします。と言うか、『芝村和樹による読書行為に関する考察』の時点で、敗北決定的ですし。もう一つ良かったのは、『中世騎士物語』の締め?

まあ、楽しめる部分は楽しめたのですが、終始中途半端な感じが漂ってイマイチだったかなぁ、と思います。もう少し、表現とかノリとかを考えてくれれば、良くなりそうな気がするので、頑張ってもらいたいです。
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