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『ゴールデンタイム 春にしてブラックアウト』/竹宮ゆゆこ [アスキー・メディアワークス]

『とらドラ10!』から1年6ヶ月。『とらドラ・スピンオフ3!』から5ヶ月。いよいよ竹宮ゆゆこさんの新作登場です!!

 

ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト (電撃文庫)

ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト (電撃文庫)

  • 作者: 竹宮 ゆゆこ
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2010/09/10
  • メディア: 文庫

 

 

 
イラストは、駒都えーじさん。豪華ですねwデビュー作から一緒だったやすさんでなくなったのは少し残念ですが、作風を考えるとこれで正解だったと、読み終わって思えましたね。

主人公・多田万里(ただ・ばんり)は1浪の末、大学に合格して上京。初めてづくしの彼は、入学式の日、友人となる一人の男と出会い、そして一人の女性と運命の出会いをしました。女性の名は加賀香子。多田が知り合った柳澤光央の幼なじみにして、彼に恋をしている彼女は、薔薇の花束で光央を襲撃し、去っていく。
彼女と離れたくて、エスカレーター式の学校から別の大学を受けた光央だったが、香子はあらゆる手段を用い、彼と同じ大学に入学してきたのだった。それも全ては完璧な人生のシナリオのために。
光央に相手にされない香子の姿を見て、彼女を気にする多田は、やがて・・・・・・。

という感じの話。

まず驚いたのが、舞台を大学に移したこと。ちょっと考えただけですが、大学生を主人公にしたラノベ、ってそうは思いつかないです。ラブコメにせよ、同居ものにせよ、何が何でも主人公は高校生、ってのが多い気がしますからねwまぁ、高校生の恋愛は『わたしたちの田村くん』と『とらドラ!』で十分に書いた!と言う事かなぁ?あと、彼女の作風を考えると、大学を舞台にした方が、よりガチな恋愛を書けるのかも、と感じました。

と、そんな感じで読み始めたのですが、かなり面白かったです。やはり、大学生の恋愛を描くためか、ギャグは少なめ。もちろん、所々笑えるネタを入れていますが。後半の『とらドラ!』の感じ、と言ったら良いでしょうか。そのため、ギャグを期待すると、ちょっと期待はずれかな、という感じがします。

ただ、その分、恋愛面が充実していたと思います。香子と光央のぶつかり合い、香子を助けようとする多田の思い、そして、やがて香子に惹かれていく多田の思い。特に、香子と光央がぶつかり合うところは、さすがは竹宮ゆゆこと言うか。ガチでしたねwこれは彼女が経験しなくてはいけないことだったとはいえ。素直に反省することができるのはいいことだと思いますが。

で、今回は香子が非常に魅力的だったと感じました。好きな人の前では、完全体であろうとするのですが、とはいってもまだ18歳の少女。悩むし落ち込むし反省するし。ただ、光央を好き!と言う思いが強すぎて失敗してしまうんだろうなぁ、という感じがしました。多田の言うとおり、最初から素の彼女を見せることができていたら、少しは変わっていたのかなぁ、という思いがしました。

そして、この物語で気になるのが、幽霊としての多田万里の存在ですね。多田万里は、高校時代、何かによってそれまでの記憶をすっぱり忘れています。そのことから、おそらくこの幽霊は、記憶喪失になる前の記憶を持った多田万里でしょう。章が始まるたびに、まず幽霊としての多田万里の語りから始まります。しかし、彼はまだ誰にも存在を気づかれていません。誰も彼を見つけていません。最後、この物語の人間会計を彼が俯瞰するような語りで物語は終わりを迎えています。この彼が、一体どう物語に絡んでくるのか。これが『ゴールデンタイム』という作品において重要なポイントになるでしょうね。一体、誰が最初に彼の存在に気づくことができるのか。これが楽しみで仕方ないです。

あと、最後に向けて一気に物語が絡んできたのが凄く盛り上がりました。プロローグ部分に当たる部分。高校生で記憶を失う前の多田がたまたま遭遇したのは・・・・・・。これが一体何を意味するのか。また、この部分で、副部長としか表記されていない人物。話の流れから行くと、これは彼女になるのでしょうが。一体、彼女はなぜ大学であったとき、あんな態度だったのか?多田と彼女の間に何があるのか。もう、気になって仕方ありません。

 

物語の展開の細かいところを見ると『とらドラ!』っぽいところがあるなぁ、とも感じました。ただ、それは細かいところでした。舞台を大学に移し、伏線を張りつつ、心理描写を細かくし、ギャグも減らし。全ては、ガチの恋愛物語を描くため、と言う感じを受けました。主人公の多田は、竜児っぽいところがあるけども、竜児よりまだ大人、という感じがしましたし。香子も、暴走具合とか、好きな人に素顔を見せられないところとか、大河っぽいところがありましたが、暴力的なところはなかったですし、落ち着いている感じがしました。この辺、竹宮ゆゆこがガチの恋愛物語を書こうとしているのか、と言う印象を受けました。あ、でも帯には「ラブコメ」って書いてあるかw

あと、挿絵がないことが少し話題になっていたようですが、これはなくて正解でしたね。挿絵がない分、物語に集中できましたし、頭の中でしっかりと場面を描くことができました。駒都えーじさんの絵をもっと楽しみたいなぁ、と思う気持ちもあるのですが。物語の世界に浸るために必要なことだったのか、と言う気がしました。

非常に気になるところで物語は終わって、続きは来年春予定・・・・・・。長いなぁ、と言う思いもしますが、この物語を読めるなら、待っても良い、と思える、素敵な作品でした。竹宮ゆゆこさんのファンはもちろん、これまた多くの人に読んで貰いたいなぁ、と思いました。でも、今は1巻だし、もう少し出そろってからでも、と思わないでもないですがw

竹宮ゆゆこが描く新たなラブストーリー。存分に堪能したいと思います。


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コメント 2

Gomarz

>>幽霊としての多田万里の存在
えっ主人公って死んでいるんですか?
それとも、主人公の多田万里と幽霊の多田万里は別モノ??
生霊??w

柳澤光央っていうのはやっぱりイケメン設定なんですかね?
挿絵がない所が想像をそそられてなおよかったという感じも
ありますか?

多田万里が大学に入った後に、死んで幽霊になったと
いうこと?? それとも、存在が薄くて幽霊みたいな人とか??
と色々考えてしまいましたが、非常に興味そそられました。

>>続きは来年春予定
ええ~それは待ち遠しいですね。 

秋の夜長にお奨めのラノベ特集とかどうです?ブログネタに
by Gomarz (2010-09-15 21:44) 

takao

Gomarzさん、コメントありがとうございます。

主人公、高校3年の時に事故で記憶喪失になっているんですよ。
その時、多田万里のパーソナルな記憶が幽霊として、肉体から落ちたのではないかと。
何て言えばいいのか、うまく説明できそうにないのですが、幽霊の多田万里は事故前の多田万里。
今肉体に宿っているのは、事故後の多田万里、と言えばいいか。
事故で魂が分かれたみたいな感じなのかな?と思っています。

光央、もちろんイケメン設定ですよ。
一応、扉には、3つ折りのポスターが付いていて、そこに各キャラのイラストが描かれていますよ。
ただ、本編読んでいるときは、そのイラストを特に意識していませんでしたね。
ちらりとしか見ていなかった、と言うのもあるんでしょうが。
自分の好きなイメージで物語を頭に描ける、ってのは、なかなか良いですよw
と言うか、一般文芸はそれが普通ですしねw

感想を見てみると、私と同じように「また『とらドラ!』みたいな話か」と思った人が多いようです。
ただ、途中から、全然違ってきているのが素晴らしいと感じました。
イラストがないし、正直「メディアワークス文庫」で出しても良かったのではないか、と思ったくらいです。
素直に、良い作品だと思います。
問題は、まだ1巻で序盤だなぁ、って感じなところなんですがw
本当に、続きが待ち遠しくて。
これとか、『空ろの箱と零のマリア』とか『とある飛空士への恋歌』とか、本当に待ち遠しいシリーズはリリース間隔が長くて悩ましいですw

なるほど、おススメラノベですね。
ちょうど、このライトノベルが凄い2011も集計しているみたいですし、良い機会かも知れませんね。
とは言いつつ、自分の読書傾向って、思いっきり偏っているのであんまり出せないかなぁ?何て思っていますw
面白そうなので、ちょっと発掘してみますw
by takao (2010-09-15 22:12) 

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