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『小さな魔女と空飛ぶ狐』/南井大介 イラスト:大槍葦人 [アスキー・メディアワークス]

私が見るところで、割と評判が良かったので読んでみました。なかなか時間が取れずに進んでいなかったのですが、ようやく読み終わったので、感想を。

 

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

小さな魔女と空飛ぶ狐 (電撃文庫)

  • 作者: 南井 大介
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2010/09/10
  • メディア: 文庫

 

 

 

レヴェトリア空軍のエーズパイロット・クラウゼは、ある日、出撃から帰ってきてすぐに親衛隊によって本国召還を告げられ、そのまま連行される。本国に帰っていった彼を待っていた任務は、「内戦解決の切り札」とされる、一人の天才科学者の補佐。若干16歳のアンナリーサの補佐をすることになったクラウゼは、彼女を補佐しきることができるのか?アンナリーサは内戦を解決することができるのか?

 

という感じのストーリー。彼の前作もそうだったのですが、今作も「空戦もの」ですね。ストパンあたりのヒットの影響か。それとも、私が知らないだけで昔から一定のニーズがあったのか、最近空戦ものが多いような印象を受けます。これに、前作の『ピクシーワークス』、『とある飛空士』シリーズ、『天空のリリー』。気のせいかも知れませんけどねw

そして、このラノベ、いわゆる「ライトノベル」とはちょっと毛色が違うなぁ、と言う印象を受けました。メディアワークス文庫で出しても良さそうな感じ。と言うのが、文章が割とかちっとしていると感じました。淡々と描写を重ねる、と言うか。心情表現も割と少ないかなぁ、と言う印象で。そのため、いわゆる「ライトノベル」の軽い文章になれていると、面を喰らうのではないかという感じでした。読書メーターの感想でありましたが、早川で出ていても?と言う感じかな?まぁ、あっちで出すには描写が薄かったり、兵器の考証が足りなかったり、と言う感じもしますが。とか言いつつ、早川は最近、ハヤカワ文庫JAでラノベ出身の作者に、読み切り書き下ろし作品を出しているので、可能性がないこともない、と言う感じが。電撃だと、『θ 11番ホームの妖精』の作者が書いていますし。

閑話休題。で、面白いなぁ、と思ったのがそんな割とかっちりした文章なのに、登場人物の造形が、ライトノベル的であることでした。ヒロインのアンナリーサは、もう典型的なラノベのヒロイン、ってかんじでしたし。主人公?のクラウゼも、飛行機乗りだけど、人を殺すのが好きではなく、だから手柄が自分の僚機のものになるようにしている、ってところがそうかな?と。とはいえ、キャラクター性で勝負しているラノベではないのですが。

と言うのも、この作品、最後まで読むと作者が描きたかったテーマ、「人間の高貴なる性質」と、それを受けて「どうして人間は戦うことを止めることができないのか」という疑問への作者なりの解答、これを描くために書いた作品、と言う印象を受けました。そして、ライトノベルのレーベルで出すためのキャラクター造形として、こうなっている、と言うか。作者の描きたかったテーマは、一人の少女の成長、と言う形で描かれていましたが、結構面白かったですし、満足でした。

気になる点もあります。感想見ていると指摘されている方も多いですが、描写が薄めであること。これがまず最大のものです。特に、アンナリーサが自分のしていることが分かったときの葛藤、それを乗り越えるとき心情。この辺が薄い、と。ここは、作品の根幹部分に当たるので、もっともっと深く描写して欲しかった、と思います。空戦ものであるのに、戦闘描写も軽め、と言うのもちょっと気になるかな?と。

あと、アンナリーサとアジャンクールの科学者としての対決、クラウゼと彼を敵と狙うエマのパイロット対決、といった感じの対立をあおっておいて、いざその場面になると拍子抜け、と言う感じだったのも、ちょっと気になりました。

とはいえ、それもまぁ、いいかな、と思える程度には満足感が得られましたし、面白かったです。大槍葦人さんの美しいイラストが素晴らしい、と言うのもかなりのプラスでした。

『テルミー』もそうですが、こんな作品がライトノベルで出版される、と言う事が素晴らしい、と感じさせてくれました。学園もの、ラブコメもの全盛と言う印象を受ける昨今ですが、まだまだラノベの「何でもアリ」なところは失われていないな、と。そして、それが良い作品である、と言うのも嬉しいですね。


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pochi

この本って「リトルウィッチ」の大槍葦人さんがイラストを担当されていたんですね。
ここのところあまりラノベを読んでいなかったのですけれど、takaoさんが面白いと言われるのであれば、読んでみようかなぁ。

by pochi (2010-09-18 15:48) 

takao

pochiさん、コメントありがとうございます。

そうです。と言いつつ、私は大槍葦人さんのイラストを数点見たことがあるくらいで、ゲームはやってなかったりするのですがw
ただ、この作品ではイラストが凄く作品にマッチしていて良かったです。

この作品自体は、ライトノベルっぽくないのであわない人もいるかも知れません。
そのため、万人におススメ、と言う事はできないのですが、興味がある方は是非読んで欲しい、と思います。

個人的には、ラストのイラストがとにかく素晴らしかったです。作品を締めくくるにふさわしい、という感じでした。
by takao (2010-09-18 18:06) 

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