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『“文学少女”と恋する挿話集 4』/野村美月 [エンターブレイン]

最後の短編集。最後にふさわしい,ステキな短編ばかりでした。

“文学少女”と恋する挿話集4 (ファミ通文庫)

“文学少女”と恋する挿話集4 (ファミ通文庫)

  • 作者: 野村 美月
  • イラスト:竹岡美穂
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2010/12/25
  • メディア: 文庫

菜乃と心葉の部室での一コマを描いた「“文学少女”見習いの発見。」。部室にいつの間にか置かれた薔薇の模様の指輪の謎を遠子先輩と心葉くんが探る「“文学少女”と騒がしい恋人たち」。心葉の妹,舞花のほのかな初恋の物語,「不機嫌な私と檸檬の君」。美羽,ななせのその後の物語。笹倉麻貴の娘,笹倉蛍の父に対する思いの物語。そして,遠子先輩のその後の物語。“文学少女”シリーズを彩ったキャラたちの素敵な挿話集(エピソード)。

 

と言う訳で,本編終了後続いてきたこの挿話集もいよいよ最終巻。“文学少女”シリーズも,次の『半熟作家と“文学少女"な編集者』で完結,と言う事で,本編終了後も続いてきたシリーズもいよいよ完結が見えてきました。私は,4冊目の『“文学少女"と穢名の天使』あたりから追いかけていますが,感慨無量です。あぁ,遂にこのシリーズも終わってしまうのか,と思うと,改めて寂しいです。

さて,本作ですが,ななせ,美羽,“文学少女"見習いシリーズの菜乃,舞花と,シリーズに登場してきたキャラたちの,それぞれのエピソードが描かれています。そして,当然透子先輩との物語や透子先輩のその後の思いを綴られた短編もありました。

意外だったのが,姫倉蛍。一瞬,誰?と言う感じだったのですが。麻貴と黒咲保(『“文学少女"と飢え渇く幽霊』に登場)の間に生まれた子どもだったのですね。このラインナップの中では意外なチョイスだなぁ,と思いました。麻貴を持ってきても良かった気もしますが。ただ,蛍の不器用さが伝わってきて,なかなか面白かったです。

どの短編も面白かったですが,注目はどうしても,美羽,ななせのその後の物語に集まりますよね。美羽は,一詩との一コマを描いた物語。ななせは,本編最終回,心葉に見送られた後,パリで天使との再開を果たそうとするお話でした。美羽は相変わらずな感じでしたが,一詩を意識しておしゃれをしたり,怒ったり,嫉妬したりするのが面白かったです。そして,一詩は一詩で,彼の不器用さが現れていて,またそれが愉快で。この2人,うまくいきそうだなぁ,と感じさせてくれる物語でした。

ななせのその後は,舞台がパリと言うことでした。本編では,典型的なツンデレ,といった感じの彼女でしたが,少しずつ変わっていたんだなぁ,という感じでした。最後に,夕歌に対する言葉が,彼女の今までの思いが全て詰まっていて,胸に来ました。彼女の思い,天使に届けばいいなぁ,と心から思いました。

そして,忘れてはいけないのが,遠子先輩の物語。遠子先輩が心葉くんを異性として意識し始める物語だったり,遠く離れた大学で,心葉くんを思う物語だったり。いつもの遠子先輩は楽しくておちゃめで。心葉くんに対する思いが切なくて優しくて。改めて,このシリーズは,遠子先輩がいてこその物語なのだなぁ,と感じました。特に,ラストの「“文学少女"の今日のおやつ 特別編 ~『百年後』~」は,遠子先輩の思いと,タゴールの『百年後』と相まって,何とも圧巻な物語でした。これが最後でも良くないかな?とすら感じましたよ。遠子先輩の

「しています,ずっと」(P.372)

が,胸に優しく染み渡りました。時折見るフレーズなんですが,でも強い言葉だなぁ,と思いました。

各物語,非常に短いながら,ファンならば読み応え十分の物語ばかり。珠玉の短編集でした。


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コメント 2

「直chan」

 私も買っては来ましたが、読むのは、何年後になるかな~という状況です。本編が読み終わったところで、止まっていますので、ほんと、いつ読めるかわかりませんね。^^;
by 「直chan」 (2010-12-30 06:06) 

takao

「直chan」さん,コメントありがとうございます。

作者曰く,シリーズどおり読んだ方が良い、と言う事なので,それに従うなら7冊目,と言う事になりますね。
短編集だけ読めば,という感じもしますが,それだったら菜乃の事が分かりませんしね。
『“文学少女"見習い』シリーズも短編集も素晴らしいできですので,是非是非読んで頂きたいと思います。
by takao (2010-12-30 09:33) 

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