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『灼眼のシャナⅩⅫ』/高橋弥七郎 [アスキー・メディアワークス]

(あらすじ)

”徒(ともがら)”の理想郷『無何有鏡(ザナドゥ)』創造を巡り、”祭礼の蛇”の代行体・坂井悠二と、フレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』シャナが、刃を交えていた。
その渦中、琥珀色の風が吹いた。
吉田一美が、宝具『ヒラルダ』へ願った思いを受け、”彩飄”フィレスが戦場に現れる。
一大決戦の舞台となった御崎市は、この転機と共に、激動を経て終幕へと向かう。
フィレスを呼んだ吉田。
生け贄のヘカテー、ほくそ笑むベルペオル、『真宰社』を支えるシュドナイ。
襲来する”徒”を屠るカムシン、上空に舞うヴィルヘルミナ、そこへ向かうマージョリー。
そして、対峙するシャナと悠二。
人間、”徒”、フレイムヘイズ。彼らが向かう先が、今ここで決まる。全ては、悠二とシャナの決着の行方にゆだねられていたーー。
最終巻、遂に登場。

 

(感想)

9年にも及んだ『灼眼のシャナシリーズ』が遂に完結。私は、4年くらい前から読み始めたのですが、そのシリーズもいよいよ完結。終盤は刊行ペースもかなり落ちていたのですが、終わってみたらこのクオリティのために時間をかけたのかな?と感じました。非常に大満足。最後は涙涙でした。

さて、最終決戦の舞台となった御崎市で繰り広げられる、新世界を目指す紅世の徒と、その誕生を防ぐために抗うシャナたち。あまりに熾烈を極める戦いでしたが、本文自体は、割とゆったりしていたような気がします。というのも、激しい戦いを繰り広げていたのは、自分たちの使命を果たすためにシャナと手を組んだ「大地の三神」と、探耽求究・ダンタリオンのと梅津を目指すサーレとキアラ。そして、カムシンと言ったところからなのかなぁ、と。もちろん、悠二、シュドナイコンビと戦うシャナ、ヴィルヘルミナ、マージョリーも半端ではない戦いを繰り広げていたと思うのですが、割と会話も多かったからイマイチ緊張感がなかったような気もします。

とはいえ、シャナってバトルシーンを楽しむ作品ではないと思うので、そこはあまり問題では無いと思いました。元々、「バトルシーンが何をやっているか分からない」と言われることもある作品ですし。

では、何がこの作品の見所かというと、作者の明確なテーマの元に描かれる、登場人物たちの「思い」だと思います。そして、いよいよ最終巻となったこの巻では、それぞれのキャラの思いが溢れていて、力を持っていたように思います。

二人の戦いを止めるために、使えば死ぬ、と言われていた宝具「ヒラルダ」でフィレスを呼んだ吉田さん。

ヨーハンの思いを受け、作戦を実行するフィレス。

自らの消滅を悟りつつ、フィレスと「約束の二人(エンゲージ・リンク)」たろうとするヨーハン。

自らの使命を果たすために、自らが囮となり使命をシャナに託す「大地の三神」。

守るために自らの命を燃やすカムシン。

ダンタリオンを滅する最高のチャンスに戦うサーレとキアラ。

後悔を振り切り、遂に自分らしさを発見するヴィルヘルミナ。

大切な人の住む世界を守るために戦うマージョリー。

守るべきものを失い、それでも自分が好ましいと思ったものを守るために戦地に赴くシュドナイ。

シャナを思うが故に、シャナと道を違え、敵として向き合い、自らの思いを達成せんとする悠二。

そして、フレイムヘイズとしての使命を果たそうとしつつ、一途に悠二を思い続けるシャナ。

それぞれの思いに圧倒されるような、気圧されるような、そして心奮わされるようなそんな感じでした。ここまであったからこそ感じる部分もあって、感慨深かったです。特に、あくまでもヒールであったシュドナイが、ここに来て意外と人間らしいような、俗っぽい感情を見せたのには意外だったなぁ、と。その前から、自らの存在意義的な面もあるのか、彼女に対してそういうところはありましたが。サブラクの最後を思い出すにつけ、「紅世の徒」も意外と感傷的な面があるのでしょうね。

さらに内容も、ここまで22巻と積み上げてきた重みを感じさせるようでした。

とにかく、今まで積み上げてきたものを全て巻き込んでいくような展開。その様子がとにかく圧巻でした。遂に自分の願いを叶えるリャナンシーなんかは、見事としか言いようがなかったかな?「ザナドゥ」の世界の行く末を決めた最後の思いに、「革正団(レボルシオン)」が出てきたのには驚かされました。ここまで見据えてあの外伝を執筆していたんでしょうね。作者の明確なテーマにはいつも感心させられますが、ここに来て作者の緻密さに度肝を抜かれるようでした。

何よりよかったのは、シャナと悠二の、お互いの全ての感情を込めた最後のバトル。「世界を巻き込んだ痴話げんか」と言われたら、「そうだよね」としか言いようのないものだったんですが。しかし、シャナを愛するが故に、自分の行く末まで見据えて振る舞う悠二の愛。そして、そんな悠二すらも真っ直ぐに受け止めようとするシャナの愛。二人の愛の思いの強さに、ただただ涙があふれてしまいました。悠二のシャナを思うが故に頑なとなっていた心を開いた、たった一文。その一文に込められた思いの強さがこちらにも伝わってくるようで。ようやく訪れたこの結末が、最高の美しさで描かれて非常に満足でした。

エピローグについては、いかにも『灼眼のシャナ』という書き方で、もう少し、と思う人がいても仕方ないかな、という感じがしました。しかし、2ページのエピローグに、二人の今が、世界のこれからが端的に表現されていて、非常に「らしい」終わり方だなぁ、と感じました。これぞ、『灼眼のシャナ』とも言うべき。そして、本編がここで終わってしまったんだなぁ、と思うと切なくなりますが、辛くても険しくても、二人で道を切り開いていくことを感じさせて、最高の形だったと思います。

本編を彩る挿絵も、今回はかなり気合いが入っているように感じました。まず、表紙からして素晴らしい。満面の笑顔のシャナ。この前には悠二がきっといることを感じさせますが。二人の幸せな結末を予想させる素晴らしい表紙だと思います。中のクオリティも高く満足していたら。最後の最後。いとうのいぢさんのコメントと一緒に描かれたイラストが、なんと素晴らしいことか。なんで、これをカラーで、三つ折りで、巻頭に持ってこなかったのか!と言いたくなるほどの素晴らしいクオリティ。ここで、さらなる満足感が得られました。このイラスト、素晴らしいからポスターとかにしてくれないかなあ、と感じるほどでした。是非とも大きい絵で見たいです。

さて、本編はここで終了。この後、外伝3巻が刊行されてシリーズ完結となるようです。まだまだ1冊残されていますが、非常に美しいラストを見せてくれた本シリーズに大感謝です。作者独特の文体故の読みにくさの壁がありましたが、それを補ってあまりある大団円が見られたこと。これが何より嬉しいです。終わってしまうことは寂しいですが、この余韻に浸りながら、アニメのラストを見届けたいです。

灼眼のシャナ〈22〉 (電撃文庫)

灼眼のシャナ〈22〉 (電撃文庫)

  • 作者: 高橋 弥七郎
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/10/08
  • メディア: 文庫

 


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『回る回る運命の輪回る -僕と新米運命工作員-』/波乃歌 [アスキー・メディアワークス]

表紙とタイトルに釣られて購入しました。第17回電撃小説大賞第4次選考作らしいですが、なるほどいいところもありますが惜しいところもある作品だなぁ、と感じました。

回る回る運命の輪回る―僕と新米運命工作員 (電撃文庫 な 15-1)

回る回る運命の輪回る―僕と新米運命工作員 (電撃文庫 な 15-1)

  • 作者: 波乃 歌
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫

 

お菓子作りが得意なこと以外、大体平均ちょっと下。どこにでもいる高校生……だったはずの少年、野島浩平。

しかし彼の前に現れた美少女工作員ノアは、浩平こそが運命を狂わせる存在《イレギュラー》なのだと告げ、さらにはなぜか浩平の『弟子』になるといいだしてすっかり家に居ついてしまう。

浩平の常識とは全く違う感覚をもつノア。そんな彼女と過ごす日々の中で、浩平の運命は少しずつ動き出してーー。

第17回電撃小説大賞4次選考作。読むと少しだけ強くなれる。明日への小さな一歩を踏み出すための物語。(紹介文より)

 

まず文章ですが、なかなか読みやすいと感じました。凄く凄く丁寧に文章を綴って仕上げた、という印象。文章にクセもなく、引っかかることがなく読むことが出来ました。そこはよかったのですが、読みにくいところもありました。事件が起こって、そこで主人公が意識を失うなりしてその場面が終了。事件がどうやって解決したかが明かされるのが次の段落の始め、という書き方になっている部分がありました。もちろんそれ自体は小説の書き方として見られることであるのですが、この部分が読みにくい、という感じがしてしまいました。自分の読む能力の低下と言われたらそうなのかも知れませんが。この部分が少し引っかかってしまいました。

設定についても、うまく生かし切れていないなぁ、という印象。この世の運命を正しい方向に導くための組織。それがソサエティ。その新米工作員であるノア。このソサエティという組織。主人公が事故から一瞬先の未来をのぞき見ることが出来る力を得た、など設定としてはなかなか面白いと思いました。が、主人公のこの能力の発現条件が、自分が危機に陥った時という制約があるために、発現シーンが少なかったなぁ、と。ラストシーンではそれがうまく生かされていましたが、この能力を生かした場面が後何シーンかあるとよかったのではないかなぁ、と感じました。

それと、キャラクター。もちろん、そうでない作品も(少ないながら)ありますが、ライトノベルの最大の売りになるのは、登場人物のキャラクター性だと思います。そのキャラクターが如何に魅力的かが重要なのですが、この物語の登場人物のキャラクターが薄味に感じてしまったんですよね。特にヒロインのノア。印象としては、現れて、いつの間にか消えて、最後に気づいたら戻っていた、という感じでした。特にラストシーンについては「?」という感じでした。ノアもキャラクターとして、悪くないと思うのですが、この作品だけ読むと、物語の説明役、という印象がないわけでもありませんでした。ここを生かし切れなかったのが痛かったなぁ、と。

運命の解釈の仕方はなかなか興味深いモノがありました(特にイレギュラーの解釈の仕方)。物語も基本の部分をしっかりと押さえられており、クライマックス部分はなかなか読み応えがあり、面白く感じました。心がほんの少しだけ温かくなる物語、という感じでしょうか。それ故に、「あと少し」という部分が目立ってしまたのが残念に思います。なるほど、第4次選考作というのも分かるかなぁ。

この作品自体、完結していますが続けようと思えば続けられる形となっています。個人的には、今回気になった点が解消されることを期待して、続きも読んでみたいなぁ、と感じました。


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『ゴールデンタイム3 仮面舞踏会』/竹宮ゆゆこ [アスキー・メディアワークス]

帯に「天然系ラブラブな日々がはじまる!」とありましたが。いや、それだけで終わらないのが竹宮ゆゆこのすごさですね。一体物語がどう転がっていくのか。

ゴールデンタイム〈3〉仮面舞踏会 (電撃文庫)

ゴールデンタイム〈3〉仮面舞踏会 (電撃文庫)

  • 作者: 竹宮 ゆゆこ
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/08/10
  • メディア: 文庫

はれて彼氏彼女の関係となった記憶喪失男・多田万里と、自称完璧なお嬢さま、加賀香子。

幕が開けた二人のラブラブな日々は、天然だったりやっぱり完璧至高だったり。一方で、万里は過去の関係が白日のもとに晒されたリンダとは真っ直ぐ向き合えずにいた。

そして凹んだ男が一人。柳澤光央は一年生会での盛大な自爆のため深く落ち込んでおり、そんな彼を励ますために万里の部屋でお泊まり会的イベントが発生するがーー!?

竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る青春ラブコメ、第3弾!(紹介文より)

 

サブタイトルが意味深だったけども、さほど本編と関係なかったと思いますが。とはいえ、内容はなかなかにシリアス。前半は万里と香子のラブラブな日々の描写に、こっぱずかしくなりつつ、幸せをもらえるような感じがしていました。「初体験は○○で」というところなんか、もう苦笑いで「爆発しろ」と言いたくなるような。この幸せな時が、二人にとって「ゴールデンタイム」なのでしょうね。

ただ、記憶を失った万里が向き合わなくてはいけないこと。それがリンダとの過去。記憶を失う前の万里はリンダが大好きで、告白までして。結局リンダの答えを聞くことなく、記憶を失ってしまったわけですが。そして、「今の多田万里」はリンダのことを知らず。加賀香子という一人の女性と出会い、彼女に恋をし、彼女と思いが重なり恋人同士になりました。ただ、「今の多田万里」と共にあり続ける「かつての多田万里と呼ばれていた記憶」はリンダを思い続けていて。

加賀香子を好きな「今の多田万里」の思いと、林田奈々を好きな「かつての多田万里」の思いの相違が物語に関わってくるのかなぁ、と思っていたら。やはりそう来ましたね。

最後の展開は怒濤の展開で、思わずうなってしまいそうでした。リンダはリンダで、万里が好きなんでしょうが。ただ、万里が死にそうになった時、自分は何も出来なかった。そばにいることが出来なかった。でも、助かって欲しかった。何を引き替えにしても。そして万里は助かった。万里とリンダが本音をさらけ出す場面でも現れていますが、万里が幸せでいられるのなら、自分の恋心も隠していていい、と思っているようです。これがまさに仮面なんだろうなぁ、と。ただ、この思いをいつまで仮面の下に隠しておけるのか。

香子は、とにかく幸せいっぱい。本当に万里を愛していて、万里も香子を愛していて。ハッピーを満喫しているところですが。ただ、今までずっと光央を追いかけて、完璧な人生を設計してきた香子にとって、今の状況ってのは初めてのことなんですよね。今まで、好きな人に思われる、と言うことがなかった。それ故に、相手のちょっとしたことが気になってしまう、というところでしょうか。最後のあの場面。消えたあれを持って行ったのはおそらく、というか間違いなく……。相手を疑いたくない。でも、疑ってしまう。不安になる。そんな自分に戸惑って、嫌になってしまう。その気持ちを仮面の下に隠したいのに、今まで自分の本音を相手にぶつけてきた香子には出来ないのでしょうね。はたして、彼女は自分の気持ちにどうやって折り合いをつけるのか。

そして、万里。遂に、遂にその時が来て。この場面を最初から想定して物語を綴ってきた竹宮ゆゆこという一作家に敬服したい気持ちです。違う少女を好きな二人の自分の思いが、どのような混沌を物語に与えていくのか。

コミカライズも決定と言うことで、勢いに乗っている感じがします本作品。この3巻のラストの展開。遂に来たこの瞬間に、今後が一体どうなってしまうのか予想が出来ず、どんな修羅場が待っているのか想像できず。ひたすら続きが気になる展開になっています。ちょっぴり大人のラブコメ、といった風情ですが、どこまでの展開を見せるのか、今後に期待です。


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『あなたが泣くまで踏むのをやめない!』/御影瑛路 [アスキー・メディアワークス]

御影瑛路さんの一年ぶりの新作。普通のラノベ……と思わせておいて。

あなたが泣くまで踏むのをやめない! (電撃文庫 み 8-8)

あなたが泣くまで踏むのをやめない! (電撃文庫 み 8-8)

  • 作者: 御影 瑛路
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫

 

かかあ天下を絵に描いたような家庭に育った主人公・岩下寿也は、亭主関白男子(パクメン)となるために自立心が必要だ、と高校から一人暮らしを始める。しかし、気づいてみたら

「このあたしにせーてきこーふんを抱くのはやめてもらえる?」

一人暮らしの自分の部屋で四つん這いになり、小学生女子(9歳)の人間椅子になっているのだった。どうしてこうなった?こうして、2人の奇妙な生活が始まる。

 

と久しぶりに自分であらすじを考えてみたところで。

作者の『空ろの箱と零のマリア』4巻が出て早一年。シリーズが好きな人間としては楽しみにしていたところに登場したのが、シリーズではなく、この新作でした。今までの氏の出版作品とは雰囲気が違う表紙に面をくらいながらも、作者の新作と言うことで読んでみました。

まず、読み始めて感じたのが、「これ、普通のライトノベルではないのか?」ということ。作者の作品は、『空ろの箱と零のマリア』しか読んでいません。しかし、インタビューで「だいぶんエンターテイメントを意識した」という『空ろの箱と零のマリア』自体がいわゆる「ライトノベル」と違った印象の文章で書かれていると感じたのですが。この作品を読み始めると、軽快なノリでギャグもあり。そして、キャラクターもライトノベル的な特徴を持っている、という印象でした。

「あれ、これは作者の新境地なのか?」と言う感じで読み進めていきました。いつもの御影瑛路さんを求めている方には不満かも知れませんが、それを意識しなければ笑えるところはしっかり笑えました。主人公の上滑り具合とか、友だちの変態っぷりとか楽しくて、「これはこれであり」というのが私の印象でした。

ただ、「ただのライトノベル」で終わらないのが、御影瑛路という作家、というべきか。中盤から話の印象が一変しました。それまでのギャグのノリが嘘のようなシリアスなテイスト。その中にもギャグはあるのですが、結構なシリアス分に「これまでとは違うぞ!」という印象を受けました。

そして、自体の解決。これが非常によかった。大人と子どもの対立、というのはありがちなシチュエーションではありますが、そこが非常に満足できる、納得できる形であり、自分の胸にしっくり来る形だったので非常に満足できました。私も大概いい年なので、子どもの論理も理解は出来るつもりなのですが、それを素直に受け入れることが出来ない、意固地な面もあります。この解決の部分では、その大人の頭の固い部分、というのがしっかり描かれていたのが印象的でした。「そう、そうなんだよ」と思わず言ってしまいそうな感じの。

ただ、その大人の正論の部分を踏まえた上で、子どもの論理でそれを打破していたので、爽快感がある、という感じで納得できました。もちろん、これを「それも子どもの論理だ」と納得できない人もいると思います。しかし、私はすとんと落ちるようなそんな感じで受け止めることが出来ました。

この巻は物語のスタート部分、始まりという印象で終わりましたが、ギャグありシリアスありで、非常に楽しむことが出来ました。一体この二人がどうなっていくのか、非常に楽しみです。これはまた、楽しみなシリーズが一つ誕生したなぁ、と思った次第です。周りには印象的なサブキャラもいますし、ここら辺がどんどん絡まっていけば、もっともっと楽しくなっていくのではないか、と思います。 個人的には黛千代子のネガティブキャラが気に入ったので、次はもう少し出番が増えると嬉しいな、と思います。

そして、本編とは特に関係ないのですが。主人公があこがれとするパクメンとして、十文字鉄斗氏というキャラが登場します。そして章と章の間に、このキャラが相談に答える、というコーナーがあるのですが。これが非常にツボでした。質問に対する答えがあまりに単純明快。そうして、正論。あまりの明解さに胸がスカッとするような、奇妙な印象を受けました。思わず十文字鉄斗さんのファンになってしまいそうでした。

2巻も出るようですし、『空ろの箱と零のマリア』とあわせて楽しみです。


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『アイドライジング!2』/広沢サカキ [アスキー・メディアワークス]

「『好敵手』と書いて『とも』と読む」とも言うべき展開。萌えて燃えてほろりと来て。素晴らしい展開でした。


アイドライジング!〈2〉 (電撃文庫)

アイドライジング!〈2〉 (電撃文庫)

  • 作者: 広沢 サカキ
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 文庫



アイドルデビューときっかけに、海上都市ニライカナイの高校・鳴国鶯(めいこくうぐいす)へと転入したアイザワ・モモは、なんとハセガワ・オリンと同じクラスに!積極的に声をかけたり、シャワールームで裸のつきあい(?)をしたりして、なんとか仲良くなろうとするモモと、それをことごとく突っぱねていくオリン。そんな噛み合わない二人だったのだが--。
『さて今回は、アイザワ・モモとハセガワ・オリンの新人コンビvsユウゼンジ・アレコ&ナギコ姉妹のツインヒールで送るタッグマッチナイト!息ぴったりの双子を相手に、今注目の二人はどのような戦いを繰り広げるのでしょうか!?二つの嵐がしのぎを削る、波乱の一戦が遂に開幕です!!』(あらすじより)


今年の新人賞組で私が読んだ唯一の作品が、この「アイドライジング!』です。その第2巻が発売されました。
前作では、主人公がデビューしていきなりトップ選手と激突。最後には無効試合になったものの、勝利を収める、という展開だったので、どう来るかと思っていましたら、タッグバトルですか。ますますプロレスっぽい展開ですね。タッチで交代しながら戦うプロレスと違って、アイドライジング!のタッグマッチは2対2でしたが。

このタッグマッチというのが大正解だったな、と感じました。コンビネーションが生まれたことで、バトルの幅が広がっていました。前作ではあまりなかった駆け引きが生まれたことで、バトルが面白かったです。オリンの行動は、モモの次への行動の為の布石、なんて定番ですが、楽しんですよね。バトルの結末に到っては、かなり熱くなりました。不満点として、相変わらずと言うべきか。敵に対する作戦があまりにおおざっぱ過ぎるきらいがある点ですが。この辺は、敵との戦いまでの期間が短いから、ということで納得することにしました。とは言いつつ、もう少し基礎トレーニングの描写があってもいいかな、とは思います。

バトルよりも見逃せなかったのは、オリンの活躍です。前作では良いキャラを持っていながらかませ犬的活躍だけで終わってしまい、もったいない感じが非常に強かった彼女。それが2巻では、前作の鬱憤を晴らすように、いい味を見せてくれたと思います。モモとのタッグマッチに向けて、本当の意味で心が繋がったシーン。タッグマッチ直前、初めて彼女がモモのことを名前で呼ぶシーン。見事に盛り上げてくれ、心震えました。この時点で、結構涙腺に来ていたのですが、その後彼女の望みが遂に叶ったシーンで遂に堤防が決壊してしまいました。必要最小限の描写でとどめたのがまた心憎かったです。おそらく最後まで描写するよりも、直前でとどめたことで感動が増したと思います。

頑なだった心を解かしたのは、相手の無邪気な善意から、というべき話だったでしょうか?今回は、章の始めのページにオリンとモモの公式ブログの更新の様子が描かれていました。交流が生まれ、最後にオリンが少しでれるコメントを残すところがまたほほえましくて。二人の関係性が本編とリンクしていて言いスパイスになっていました。「『好敵手』と書いて『とも』と読む」と言う展開が素晴らしかったです。きっとこのシリーズの最後のバトルは、この二人がクイーンの座を争って戦う話なんだろうなぁ、とそんな感じがしました。

今後の展開を占う上で気になったのが、株式会社ミニテックスのキムラ別室室長・キムラとラネイド社長・ウダガワの関係です。お互いが知人であり、お互いが切れ者であるような描写が見られました。そして、二人は今後もお互いを利用しようとするようですが。二人の駆け引きが、モモとオリンの活躍にどう影響していくか、気になるところです。

タキがかっこいいところ見せたり、エリーが複雑な心境を見せたり。前巻で活躍した二人も、出番は少ないながらいい味を出していたと思います。表現や設定で気になる点がないわけではないですが、私の中ではそれに目をつぶってもいいかな、と思える内容でした。気になる点は、今後改善されていくことを期待しつつ、続きを楽しみに待ちたいと思います。
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『そして、誰もが嘘をつく』/水鏡希人 [アスキー・メディアワークス]

最近は,氏の作品が定期的に出て嬉しい限りです。作品の質的にも良くなっていると感じますし。このまま,順調にいってくれると嬉しいです。

そして、誰もが嘘をつく (電撃文庫)

そして、誰もが嘘をつく (電撃文庫)

  • 作者: 水鏡希人
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: 文庫

巨大な豪華飛行客船「ティターン号」。その処女航海に,とある目的を秘めて乗り込む一人の少年と,小さな相棒がいた。アデルベールとティッカ。船の中で一緒になるのは,世界を股にかける冒険商人。最近台頭してきた女優。莫大な財力の侯爵家など。様々な人々を乗せ,空の旅に出るティターン号。しかし,その船の中では,怪盗セニンから,グレーシーハイム家が所有する仰いだ嫌を頂く,と言う予告状が届く。さらに,当のグレーシーハイム家の令嬢・リラの元に化け物が現れて。リラを助けたアデルベールは彼女を守ることを誓うが。果たして,アデルベールとリラの運命は。

 

飛行船,怪盗,と言うことで,一種のクローズド・サークルの作品かと思ったのですが。タイトルからしても。ただ,ミステリと言うわけでもなかったような感じがしました。やっぱり基本にあるのは,ボーイミーツガールだと感じましたし。さらに,怪盗がでているので,犯人を追い詰める話か,と思っていたら,悪霊の登場。主人公は実は魔法使い。相棒は,魔法で命を宿した人形,と別の要素も絡んで来ています。少し要素が多いかなぁ,という印象もしましたが,最後にはこれらが見事に絡まり合っていたと思います。ただ,その分厚さもなかなかなことになっていて,本編が400ページ超えています。

この作品の魅力,と考えると,ラノベでは珍しくキャラクターではなく,ストーリーかなぁ,と思います。と言うか,キャラクターの造形として,ライトノベル的なキャラはいなかったと思います。主人公が魔法を使える,とか,リラが秘密を抱えている,と言うポイントはありますが,それでキャラクターが増強されている,と言う訳ではないですし。小説の普通の登場人物,と言う印象を受けました。全ては,ストーリーの中で無理のないキャラクター,という印象でした。

その分,ストーリーは良かったです。一方で怪盗。一方で悪霊。二つの存在に狙われるリラ。それを守りつつ,何らかの目的を果たさんとするアデルベール。序盤は,どっちがメインなんだろう?と困惑しましたが,なるほど終わってみると見事に生かされていますし,この二つがあってこその物語だったなぁ,と感じました。その中でアデルベールとリラの中に生まれる密かな思い。そこがまた良かったです。

欠点としたら,登場人物が割と多いし,名前もちょっと変わっているものが多いので,覚えるのが大変,と言うくらいでしょうか。最初のカラーページに登場人物のイラストと名前はあるのですが,それでも全部ではありませんし。とはいえ,読んでいけば重要な登場人物くらいは名前を覚えられると思いますので,そこまで重大な欠点というわけでもないと思います。

さて,作者の水鏡希人さん。今まで電撃文庫から4冊,メディアワークス文庫から1冊出していて。メディアワークス文庫の方は読んでいませんが,電撃文庫で出しているものの方は,2作目で「あれ?」となったものの,ここ2作で良くなっていると思います。思うに,2作目は「ライトノベルとは何か」ってことで,無理にキャラクター小説を書こうとしたのが良くなかったんでしょうね。作者の武器はストーリーだと改めて感じるような作品だったと思います。

今まで全てが読みきりだった作者ですが,この作品に関しては,続きもかけそうです。(とはいえ,ふたごもハーレムも続けようと思えば続けられたのですが)ここに来て,デビュー作の『君のための物語』の延長線上にある作品,と言うことでシリーズ化も期待できそうな作品だなぁ,と感じました。果たして,次に来るのがまた別の作品になるのか。それとも,この作品をシリーズ化するのか。これからも私個人としてこの作者を追いかけたいと思います。


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『メグとセロンⅥ 第四上級学校な日々』/時雨沢恵一 [アスキー・メディアワークス]

1年に1回のお楽しみのこのシリーズ。ますますキャラクターへの愛情が深まる一方で……。

メグとセロン VI 第四上級学校な日 (電撃文庫)

メグとセロン VI 第四上級学校な日 (電撃文庫)

  • 作者: 時雨沢恵一
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: 文庫

第4上級学校の新聞部の6人。学校主宰のオリエンテーリング大会に出場して,新聞部の宣伝のために1位を目指したり,友達ができないという悩みを抱えた短期留学生を受け入れたり。相変わらず,賑やかで楽しい日々を送っていた。そんな中,メグミカとセロンの関係が変わってしまいそうな事件が起きてしまって。

 

今回は,事件はなし。短篇2本に中篇2本の4作+あとがき特別企画掌編1編からなっています。

まず,出だしの作品が印象的でした。メグミカの弟が,セロンの実家に電話をかける,と言うお話ですが。電話に出たのは,セロンの妹。そこで,セロンの妹がメグミカの弟から学校の話を聞く,と言う形でしたが。これは,本編の前に登場キャラクターの復習のお話かと思ったら,最後の最後で「一緒に第4上級学校行こうぜ!」な流れ。はて,これは次期シリーズ『リイナとクルト』の布石かな?と。と言うことは,と感じました。

第2話の顧問はあの方が再登場。新聞部の顧問に就任し,新聞部が部活として認められる短篇。相変わらず,セロンは頭が切れるなぁ,なお話でした。

第3話は,オリエンテーリングに参加するお話。ラリー,セロン,メグミカのチーム,ジェニー,ニコラス,ナタリアのチームで参加。セロンたちが真剣にトップを狙う一方で,ジェニーたちはジェニーの過去の話に花を咲かせる,という構成でした。で,この話の見所はなんと言ってもセロンとメグミカのにやにやな関係!ではなく,ジェニーの過去だと思います。ジェニーが髪を切った理由。第4上級学校に入った理由。それが語られるのですが。いつもと違って自分の過去を語るジェニーが何とも愛らしい話でした。彼女の失敗から学んだ教訓。分かっていても実行できない自分としては,胸に突き刺さるものがありました。そして,メグミカの挿絵が可愛かったw

そして,この巻の一番の見所,第4話。遠くから短期留学に来ている,友達ができないことに焦りを感じた学生を,新聞部が受け入れる,と言うお話。この話に限ってはいつもと違い,学生の隣に寄り添った見えない誰かが,その学生に語りかける勝ちでお話が進む語り口。それが新鮮さを与えていました。語り口もマイルドでした。まるで語りかけられるような感じで物語が語られていくんですよね。

新聞部に加入した彼がすることになったこと。それは,彼が首都を見て感じたことを新聞にすること。新聞部の6人は,それに協力する形でしたが。いつもと違って,間に一人フィルターを挟んで6人を眺める感じがしました。そのことで,6人の新しい面が見えたような感じがしました。改めて,この6人は誰一人かけてはいけない,最高のメンバーだ,と言う印象を強めました。

そして,この新聞部加入を勧めたカウンセリングの教師。もしかして,と思っていたらやっぱりそうで。この演出が心憎かったです。お約束とも言える展開ですが,使い方がうまいとこうも効果的なんだ,と実感しました。

そして,この留学生がメグミカとセロンの間に落としていった大きな爆弾。今まで,生き生きと動くメグミカを,乙女なセロンが見守る,と言う展開に大きな変化をもたらすことになりそうなほど大きいものでした。ジェニーの言葉が意味深ですが。ただ,どんなことになっているかは,想像できそうかな?この留学生が残した波紋がどのように広がって,どのように収束していくかは次の巻に持ち越されてしまった形です。これまた1年後ですかね?とにかく気になるし,早く続きが読みたくて仕方ないです。

このまま,この事件がシリーズラストエピソードになっても不思議ではない感じですが。なるほど,だからこその第1話の展開なのか,と納得。このシリーズが大好きだっただけに,終わってしまったら寂しいなぁ,と感じますが。その一方で,幸せそうに微笑むメグミカと,その隣で心の中は喜びをかみしめつつも,表情は無表情(少し赤くなっている)なセロンは見てみたい!と思い,少し複雑です。果たして,二人がどうなるのか,気長に待ちたいです。


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『ゴールデンタイム2 答えはYES』/竹宮ゆゆこ [アスキー・メディアワークス]

遂に来ましたよ,第2巻。竹宮ゆゆこの全力全開,って感じで実に良い感じに展開していると思います。少ないながらも挿絵も挿入されていましたw

ゴールデンタイム2 答えはYES (電撃文庫)

ゴールデンタイム2 答えはYES (電撃文庫)

  • 作者: 竹宮ゆゆこ
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: 文庫

自称・完璧だが,不完全なお嬢様・加賀香子。彼女が描いた運命の結婚のシナリオを応援する内に,彼女に惹かれていく記憶喪失の大学生・多田万里。恋に破れた香子に遂に告白する万里だが,答えはNo。二人は友達として過ごしていくことに。一方で,おまけん(サークル)の先輩であるリンダ先輩。万里に初対面を装って接してきた彼女だが,高校時代は彼女とはかなり親しかったようで。
自分を振ったのに友達として接する香子。良き先輩として接するリンダ。二人の女性の行動によって万里は心が振り回される。万里が発した二人への問いかけに対して,二人の答えは……?

 

読み終わって,「待っていて良かった」純粋にそう思えました。竹宮ゆゆこの真骨頂発揮中,という感じのストーリー展開。不器用な登場人物たちの空回りする行動。バカ騒ぎの様相の日常生活の中で絡まり合うそれぞれの気持ち。そして,謎を呼ぶシリアステイストの多田万里の幽霊パート。 コメディにガチの恋愛パートが絡まって,上質のラブコメだと感じました。

この巻を読んでいて感じたのが,『ゴールデンタイム』という作品タイトルの意味。サークル活動。飲み会。講義。そして,その中で生まれる人間関係。高校時代までとは違う,一種の自由さ。社会に出るまでのモラトリアムとも言える大学時代の一コマで繰り広げられる,人生のこの1ページ。あまりに不器用で,読んでいて「もう少しうまく立ち回れないかなぁ」とも思うのですが。ただ,不器用でも,時には自分の気持ちを隠したり。時には自分の気持ちを思いっきりぶつけてみたり。相手に振り回されたり,相手に寄り添ったり。今このときは,それこそ心振り乱される,という感じなのかも知れませんが,大学時代を終えて振り返ってみた時,甘酸っぱい,充実したものとして思い出されるこの瞬間。これこそが『ゴールデンタイム』ではないかなぁ,何て思いました。

そんな感じの第2巻。コメディパートも多かったですが,それ以上にガチパートが多くて,ぐんぐん本に引き寄せられてしまいました。多田万里の心の叫びが痛かったです。香子に対する告白に破れ,友達として接することを決めた万里。生まれ変わろうとする香子のそばにいるものの,香子の気持ちの向きを感じた時のその気持ち。あぁ,実に痛々しかったです。リンダに対するあの言葉も。言っちゃいけないとは分かっているのですが。相手の真意が測りきれなくて,酒の勢いも借りて,つい気持ちをぶつけてしまう気持ち,分からなくありませんよ。

そして,この巻の中心にいたのは,加賀香子とリンダの二人でしょうね。あらすじでも書かれていますしw二人の,万里からしたら理解不能の行動。万里を振り回しているとしか思えないそれ。自分が万里だとしても,「冗談じゃない」って感じだろうだろうなぁ,と思います。そして,リンダの,香子の本心に触れた時……。これが分からないから自分は,と思ってしまいましたが(^^ゞ

そして,この巻の一番の見所は香子が,万里に本心を打ち明ける場面でしょうね。今まで,自分の思い描く完璧なシナリオを演じてきた香子。それで初恋に破れ,今また万里が離れていこうとした時に,遂にシナリオを捨てることができました。自分の今まで支えてきたものを捨てて,ある種なりふり構わずに打って出たわけですが。その本心に触れた時,今までの訳の分からない行動が全て氷解していくようで,ちょっと彼女を許して良いのかなぁ,何て思ってしまいました。都合のいい男と思われてしまうかも知れませんが。でも,それが相手のことを好きになってしまった人間の弱いところ,ですよね。

さて,この巻で物語は一段落,といいたいところですが。まだまだ物語は序盤の一つの山場を乗り切ったにしか過ぎない感じかも知れません。「あれで終わりだなんて,そんなの,ないじゃんかっ!」(P.248)なリンダがどうでるかが気になるところです。あの日のリンダの足取りは若干判明したものの,その気持ちの揺れ。答えは明かされないまま(答えは分かるような気がしますが)。香子と万里を見て,リンダがどう動いていくか気になるところです。『とらドラ!』で言うと,亜美ポジションの彼女だと思いますが。『とらドラ!』ではできなかった,リンダの逆襲,本気が見られるかも知れません。大学生ですしw

そして,相変わらず本編のノリとは全く違う有り様を見せる,かつて多田万里と呼ばれていた幽霊のパート。万里のそばに常に寄り添い,万里にアドバイスを送り,背中を押すものの,誰にも気づかれることがなく。ただ,そこにあり続ける存在の彼ですが。リンダと向き合うその場面になって,彼の存在意義が分かるような気がします。一体,かれはどうしてそこにいるのか。万里に気づかれることがあるのか(この巻では,うすうすその存在を感じているような描写はありましたが)。気になるところです。

『ゴールデンタイム』。人生の中で輝き続ける,その時代。果たしてこれからどうなっていくか,楽しみで仕方ありません。


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『アイドライジング!』/広沢サカキ [アスキー・メディアワークス]

第17回電撃小説大賞金賞受賞作。今回は2作あったようですが,イラストをCUTEGさんが担当していると言うことで,こっちから読んでみました。

アイドライジング! (電撃文庫)

アイドライジング! (電撃文庫)

  • 作者: 広沢 サカキ
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/02/10
  • メディア: 文庫

 

アイドルが日本を動かすと呼ばれるようになった時代。アイドルは「戦うもの」となっていた。各企業の技術の粋を集めて作られたバトルドレスを身にまとい,ニライカナイに作られたステージで戦うアイドル達。そこに一人の少女が飛び込む。15歳にして伸長181センチの中学生・アイザワ・モモ。とある目的のためにお金が必要な彼女は,1ヶ月でお金がたくさん稼げるから,と言う理由で「アイドライジング」に足を踏み入れる。彼女のマネージャーとなったオウダ・サイとともに,彼女は迫り来る強敵達と戦いを繰り広げる。

 

アイドル+(微?)熱血+微百合=『アイドライジング!』。読み終えてそんな印象を受けました。ラノベで百合を扱う作品って以外と少ないので,業界最大手の電撃から出てきたことに驚きました。まぁ,電撃はジャンルが本当に幅広いからできるのかも知れませんが。

熱血好き,百合好きの私としては,もう完璧,と言うくらい好みの作品で,非常に楽しむことができました。帯に「アイドル」と書いてあったので,どう来るのか,と思ったのですが。うまいこと,バトルとからめてきたなぁ,と言う印象を受けました。勝負は,1試合に3発だけ放つことができるアクセルスマッシュを,相手に先に一撃咥えたものの勝ち,と言うわかりやすいルール。そして,アイドル達は企業の技術の粋を集めたバトルスーツを身にまとうことで,その企業が得意とする分野の技術を応用した特性を引き出すことができる。この辺,非常に考えられているなぁ,と感じました。

個人的にツボだったのは,キャラクターたち。主人公のアイザワ・モモにそのマネージャーのオウダ・サイを始め,それぞれのキャラが非常に立っていて,魅力的でした。最初は,ぶりっこと思わせておきながら,とある事情からオタクに目覚め。味を出していたハセガワ・オリン。モモの初戦の相手であり,アイドライジングのトップ4人しかいないオペラ・オービットの一角,タキ・ユウエン。そして,オペラ・オービットの一人にして,史上最年少でアイドライジングトップのクイーンに輝き,今期無敗のマツリザキ・エリー。それぞれが個性的で愛らしいなぁ,と感じました。

ただ,何より良かったのが主人公のモモとマネージャーのサイのコンビ。いや,もうカップルと言っても過言ではないと思いますがw「アイドルとマネージャーは一心同体」を合い言葉に,デビューしたてのモモとは格が違いすぎるタキ,あるいはエリーの二人と立ち向かうのはなかなか燃える展開でした。ただ,お金が欲しくてアイドルになろうと決意したモモを,サイがうまいことフォローしているなぁ,と言うのが感じられて,凄く気持ちが良かったです。お互いがお互いを必要とする,っていうのは,こういう物語では必須ですしね。非常に理想的なコンビだったと思います。身長181センチのモモと身長138センチのサイ。ものすごいでこぼこコンビってのも良いですね。

気になる点としては,描写が少なくて物足りなさを感じるところがある,と言う点でしょうか。特に,バトルに関してはもう少し文量があっても良かった気がします。それと,トップの二人が単純な作戦に引っかかるのもどうなのかなぁ,と言う点も気になりますね。この点は次の巻での成長に期待したいところです。

それと,オリンの扱い。扱いがかませ犬的で少し見せ場に乏しかったかな,と言う感じがしました。結構美味しいところは持って行ったとは,個人的に思うのですが。ただ,彼女のキャラクター。バトルドレス。そして,彼女の所属する会社の社長のウダガワ・ジュンイチのくせ者っぷりからして,今後の台風の目になりそうな存在ではあると思います。続きに期待です。

個人的にはものすごくツボの作品で,一発で好きになってしまいました。イラストも素晴らしいですしねwこれは次が楽しみな作品が出てきたなぁ,と。扱っている舞台からして,非常に映像に向いている作品,と言う印象も受けましたし。これは,人気が出たら十分にアニメ化を狙える作品ではないかなぁ。と言うか,アニメ化して欲しいです!!


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『シアター!2』/有川浩 [アスキー・メディアワークス]

読んだのはちょっと前になりますが。有川浩らしい展開になって,かなり面白かったです。

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/01/25
  • メディア: 文庫

 

「2年間で300万円を完済すること。それができない場合は劇団を潰せ」と言う春川司から出された条件を飲んだ「シアターフラッグ」のメンバー。借金返済に向けて,公演の練習に挑むがそこにも様々な問題が起こる。シアターフラッグを離れたメンバーとの確執。舞台と俳優への道との葛藤。些細なすれ違い。そして,シアターフラッグの主宰・春川巧にも問題が発生!問題を抱えつつ,残り少ない公演回数でシアターフラッグは借金完済できるのか?

 

1巻は,司と千歳と巧の物語,と言う感じだったかなぁ?と覚えているのですが(正直,そこまで細かいところを覚えていないw)この巻では,劇団員それぞれのメンバーにスポットが当てられて,物語が展開していました。そして,その各キャラクターがそれぞれ個性的で,非常に生き生きとしていました。各公演ごとに,誰かが問題にぶつかる,と言う展開でしたが,それに彩りを添えるのは,劇団員の恋。時々友情。誰かが誰かを思う気持ちによって,同じ劇団のメンバーが救われる,というのは,非常にすがすがしい思いがしました。そして,恋愛模様をふんだんに取り入れることで,有川浩の良さが存分に引き出されていました。いやぁ,甘いwそして,非常に気持ちいい。

そして,今回それぞれのメンバーが問題にぶち当たるのですが,それがメンバーの成長に,ひいては劇団としての成長に繋がっていたと感じました。元々,司が2年後を見据え,できることを劇団員に割り振るようにしたことが切っ掛けだったと思うのですが。最初は,「楽しければ」という考えで劇団を続けていたメンバー。ある意味刹那的な楽しさしか考えていなかった,と言うところでしょうが。しかし,自分たちの状況を把握し,さらに鉄血宰相こと,春川司を迎えたことで,着実に「自分たちの楽しいことを続けるためにどうしたらいいか」と劇団として一つ上のステージに進みつつあるなぁ,と感じました。これも,もちろん,演劇という道を諦めさせるために全力でサポートしている司の助けがあってのことなのですが。それ以上に,自分の立場を理解し,行動するメンバーの力を感じました。実に心強い限りです。

さてさて,劇団の公演も残り2回。借金が残り約132万。厳しい状況に追い込まれつつも,劇団員の成長を見る限り,借金完済は実現できそうなのではないか,と感じます。そして,これが終わると,司ともお別れ。この巻では,他のキャラの出番が増えたために,若干出番が減ってしまった千歳がどう動いてくるか。ふたりの距離は確実に近づいていると思いますが,どこまで千歳が近づけるのか,非常に楽しみです。

そして,もうひとりの主人公とも言える,主宰・春川巧。牧子の思いを受け取り,一体どんな答えを出すのか。また,主宰として少し成長している様子は見られますが,司が去った後,彼が劇団を支えていくと考えたら,まだまだ力不足。彼が一体どこまで成長していけるか,非常に楽しみです。おそらく最終巻になるであろう3巻。非常に楽しみです。


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