SSブログ
メディアファクトリー ブログトップ
前の10件 | 次の10件

『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』/鈴木大輔 [メディアファクトリー]

最近,また妹ものが多いなぁ,と言う印象です。アニメでは『お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!』が始まりましたし。で,ラノベでもそんな感じのタイトルの作品が発売されていたわけでw先月から密かに積んでいて,ようやく消化できましたwなんか,最後の「ねっ」って言い方が似ているwあっちは,ツンデレ風タイトルで,こっちは開き直り風タイトルですがw

お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ (MF文庫J)

お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ (MF文庫J)

  • 作者: 鈴木大輔
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/12/21
  • メディア: 文庫

両親が亡くなり,別々に引き取られた双子の兄妹秋人と秋子。6年ぶりに一つ屋根の下,二人っきりで同居することができることになった。お兄ちゃんが大好きな秋子は,6年分の鬱憤を晴らすかのようにお兄ちゃんに甘えて,迫ってきて。さらに,妹が通う高校に編入した秋人は,高校の,個性豊かな生徒会メンバーに言い寄られ……。相談に乗ってくれるのは,友人の猿渡銀兵衛春臣だけかと思っていたら……。

 

巻数表記もなかったので,読み切りで,可愛い妹に迫られる兄が,可愛いなぁ,と思いつつ適当にあしらう,みたいな話かと思っていたのですが。全然そんなことなく,この巻は,むしろプロローグ,という感じでした。そして,2巻の原稿は書き上がっていて,3月に出版予定とか。何で巻数表記しなかったんだろうw

と言う事で,この巻は秋人が妹と同居を始めてから高校の新学年が始まるまでの,約2週間程度?のお話を描いたものです。その中で,主人公が個性豊かなメンバーと出会い,好意を抱かれるまで,という感じで,まさにプロローグという感じです。本編はまだまだこれから,という感じです。

とはいえ,この巻はとにかく妹が可愛かったです!生まれた時からお兄ちゃんを予約済み,むしろ売約済み,と言う秋子があの手この手でお兄ちゃんに迫ります。ちゃんと兄がいやがることはしない,と言う守る線はあるようですが。

「兄妹である以前に男と女です!」(P.16)

「わたしとお兄ちゃんの愛は本物なんです!真実の愛の前ではタブーなんて無意味なんです!血のつながりなんて些細なことなんです!」(P.255)

と言い切っちゃう妹がとにかく愉快で。なにせ,自らの意志で一年中発情しているらしいですしw

それで,兄にあしらわれてしまうのですが。その時に

「ええええええええええっ!?」

と声を上げるのが,だんだん可愛く思えてきて。途中からクセになってしまいましたw何か,これがないと物足りない,みたいな感じで。とにかく,兄に迫って,あしらわれて,嘆いて,でもお兄ちゃんの優しい言葉に復活する,とコロコロ様子の変わる秋子が可愛くて可愛くて仕方がなかったです。久しぶりにあった妹がこんなに可愛いわけがない,って感じでしたw可愛い自分だけを見て貰いたい,と色々努力するところもまた可愛かったですwまさに恋する乙女,と言うかw

気になる今後の展開ですが。秋人は,秋子のことを「妹のとして愛している」と言っていますが,読んでいるとそれだけの感情でもない気がするんですよねwその辺,一体どうなっていくのかが非常に楽しみです。


ブログパーツ
nice!(23)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『精霊使いの剣舞』/志水祐 [メディアファクトリー]

デビュー作『やってきたよ、ドルイドさん!』が好きで,それ以来個人的に応援している作者の最新作です。と言うか,『やってきたよ、ドルイドさん!』書いてくれるのがBESTなんだけどなぁw

精霊使いの剣舞 (剣と学院と火猫少女)

精霊使いの剣舞 (剣と学院と火猫少女)

  • 作者: 志瑞祐
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/12/21
  • メディア: 文庫

精霊使いとして訓練を受ける貴族の礼状たちを集め,英才教育を行うアレイシア学院。そこの学園長に呼ばれた少年・カミトは,偶然学院に通う女生徒・クレアの水浴びを覗いてしまう。さらに,彼女が契約しようともくろんでいた精霊と契約してしまったからさぁたいへん。精霊と契約できるのは女性のみ。唯一の例外は,魔王と呼ばれた精霊使いのみ。驚くクレアだが,力を欲するクレアは,カミトを自分の契約精霊にしようとして。
学園に辿り着いたカミトは,学院長から学院への編入と2ヶ月後に行われる精霊剣舞祭(ブレイドダンス)に参加することを命半強制的に要求される。精霊剣舞祭に最強の剣舞姫。レン・アッシュベルが参加することを知り,学院長の要求に応じることになったカミトは。学院に通う女生徒は,みな箱入り娘。どうなるカミトの学院生活?

 

と言う訳で,今回も異世界ファンタジーできました。とはいえ,日本っぽいところがあったりするみたいで,地球をベースに想像した異世界,って感じですが。しかし,なぜ日本っぽい国はどの異世界でも極東の島国なんだろうw(まぁ,日本をベースにする場合のお約束なんでしょうけども)『白銀の城姫』の時もそうでしたが,この作者,本当に書きたいのは異世界ファンタジーなのかなぁ?と言う気がしました。

ただ,今回はどちらかというとコメディよりの作品かなぁ,という感じでした。作者もあとがきで「基本は学園ラブコメ」という風に書いていますし。その辺,前作の反省なのかなぁ,という感じがしました。『やってきたよ、ドルイドさん!』ほど極端なコメディではなく,しかし『白銀の城姫』ほどシリアスでもない作品,という感じがしました。決して中途半端だ,って意味ではナイですよwいいとこ取り,という感じです。

基本は学園ラブコメ,って事で,1巻からハーレム展開でしたw精霊剣舞祭が5人組でないと参加できない上に,基本的に女性しか精霊契約できない,と言う事で,ハーレム展開は既定路線なのですが。今回は,仲閒になりそうなメンバーが3人出てきて,3人とも主人公を意識する,と言う展開でした。あと,主人公が精霊契約した「魔王殺しの聖剣」が普段は人間の女性体で,彼女も主人公に好意のようなものを抱いている,と言う展開でした。早いなぁwとも思いますが,ラブコメのハーレム展開は,ハーレムを築いてからが楽しいところなので,そこは好意的にとらえました。

少し気になった点として,主人公を取り巻くキャラが『ゼロの使い魔』っぽいかなぁ?と言う点ですが。まぁ,これは私も読書メーターで感想を見かけてそう感じただけかも知れませんし,そこまで気にすることではない気もします。と言うか,そんな事気にしていたら,ライトノベルなんて読めない気もしますしw

ただ,キャラが3人ともツンデレっぽいのが気になるかもですね。デレデレとかクーデレとかヤンデレとかパートナー的立ち位置とか,色々あると思うのですが。みんなそれぞれ良いキャラだと思うのですけども,イマイチ差をつけられない気がします。

物語は,今回は主人公とおそらく正ヒロインのクレアが持つ過去,という感じでしたね。今回は特に主人公のカミトの過去をクローズアップしていて,最後には彼が立ち向かわなければいけない過去とも対面を果たしました。この主人公が立ち向かわなければいけない過去からの刺客,世界の危機に絡んで来そうで。そこに,クレアの過去が絡んで来そうだなぁ,と言う印象を受けました。展開としては,王道ですね。なかなか期待できそうかなぁ,と言う感じを受けました。

今回のバトルシーンですが,これまたあっさり。『白銀の城姫』でも,バトルシーンがあっさり気味で物足りなさを感じましたが,この点はまだまだかなぁ,と言う印象を受けました。今後,期待したいです。

個人的には,むっつり乙女のエリスがお気に入りかな?表では凛々しく振る舞っているけども,本質的には乙女,と言うキャラは大好きなのでwそのほかのキャラとのラブコメ展開も楽しめそうです。さらに,カミトとレン・アッシュベルとの関係,などストーリー展開でも,なかなか気になる点があり,こっちも楽しめそうです。とりあえず,今後に期待したい作品ですね。とりあえずは4巻以上ストーリーが展開されることを期待したいですw


ブログパーツ
nice!(16)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『この中に1人、妹がいる!2』/田口一 [メディアファクトリー]

イラストのすばらしさは相変わらず。本編もなかなか楽しめました。

この中に1人、妹がいる!2 (MF文庫J)

この中に1人、妹がいる!2 (MF文庫J)

  • 作者: 田口一
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/11/20
  • メディア: 文庫

心乃枝や雅と仲良くなったものの,未だにつかめない妹の正体。妹を名乗って将悟に電話をかけてきていたのは,心乃枝だと判明したしと思ったら,新たに妹を名乗る人物から,毎朝モーニングコールがかかってくるようになって,将悟は寝不足に。寝不足の将悟は,いもうとカフェを経営する先輩・嵯峨良芽依とお昼寝友だちになってしまう。
そんな中,将悟は妹カフェの経営に協力することになって。そうする内に,芽依に気になる点が出てきて。もしかして,芽依が妹?

 

この巻で妹と疑われたのは,嵯峨良芽依。彼女は先輩と言うことで,妹ではない,と思っていたのでこの展開できたことが驚きでした。彼女は捨て子で1歳か2歳の時に今の両親に引き取られた,と言う設定。なるほど。これなら,1年年上でも本当の年がわからないから,もしかしたら妹,と言う可能性もあり得るというわけですね。どうして,自分が将悟の妹だと分かったのか,と言うツッコミどころはあるような気がしますが。

と言う訳で,この巻は嵯峨良芽依の物語でした。最初の方に,心乃枝と雅のそれぞれのパートがあって,それぞれが積極的な面が見られましたが,それはおまけみたいな感じでした。正直,読み始めてその展開だったときは「あれ,微妙?」と思ったのですが。ところが中盤。嵯峨良芽依が話の中心になってくると「お,面白いんじゃない?」という感じになってきて,読み終わることには「面白かった!」となっていました。

特に,終盤の展開はかなり好みの展開でした。芽依,だんだん将悟に惹かれているなぁ,と感じたところでまさかの告白。そして,心乃枝の涙。種明かし・・・・・・。最後の彼女の苦悩の告白は,胸に来るものがありました。もっと軽い感じで来るのか,と思ったところに意外にもガチな展開で,かなり楽しめました。

さて,今回も大活躍したのが,ボイスチェンジャー付きの携帯電話。謎の妹が,声から正体がばれないように使用している高性能ボイスチェンジャー機能付きですが,心乃枝が持っているものと,今回出てきた2つしかないそうです。そして,今回出てきたものは,芽依が捨て,それを謎の少女が拾って。3巻は彼女の物語になりそうです。たぶん,あの子だろうなぁ,と言う予想はできていますが。気になるところとして,携帯電話を使ったネタはこれで打ち止めになるかな?と言う事。そうなると,次はどんな展開で楽しませてくれる事になりそうです。一体,どんな展開で楽しませてくれるのか,楽しみです。意外と,この「妹は誰なんだろう?」というのが気になる,と言うか楽しいです。

最後に,やはりイラストのすばらしさを語らないわけにはいかないでしょうw表紙は神凪雅。何か,見れば見るほど可愛いと思えてきます。カラー扉もちょっと肌色が多かったり,ウエディングだったりとかなり見応えがありました。そして,一番よかったと思うのが,見開き挿絵。何となくイメージで,ラノベの挿絵は右ページ,と言うのがあるのですが,最近見開き2ページの挿絵が増えているように感じます。この巻では,文章に合わせて,その展開にあった挿絵があって,かなりインパクトがありました。今月のMF文庫j,『僕は友達が少ない』と言い,かなりGood Jobです。

だんだんと,この作品のおもしろさに嵌ってきたかなぁ,という感じがします。3巻も楽しみ。


ブログパーツ
nice!(28)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『僕は友だちが少ない 5』/平坂読 [メディアファクトリー]

意外な展開になってきてはいますが,安心のおもしろさですね。

僕は友達が少ない (5) (MF文庫J)  (MF文庫 J ひ 2-23)

僕は友達が少ない (5) (MF文庫J) (MF文庫 J ひ 2-23)

  • 作者: 平坂読
  • イラスト:ブリキ
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/11/20
  • メディア: 文庫

父からの電話で,星奈と結婚することになっているらしい,と言う事を聞いた小鷹だが,結局なにもなく。今日も今日とて隣人部はいつもどおりの日々を送る。星奈が小鳩を遊園地に誘って,全員で行くことになったり,みんなで乙女ゲーをプレイしたり,理科が発明したタイムマシンを使ってみたり。
色々衝撃的な事実が判明したり,ばれたりしたり。どうなる隣人部。

 

感想ですが,ネタバレが大いに含むために,先に読んでしまうと本編を楽しめなくなってしまう恐れがあります。今後,読もうと思う方は読まないようにお願いします。

ネタバレを気にしない方,すでに読み終わった方は追記をご覧下さい。

続きを読む


ブログパーツ
nice!(22)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『聖剣の刀鍛冶 10.Trial』/三浦勇雄 [メディアファクトリー]

いよいよ訪れてしまったその時。それがショックで,セシリーを思うと切なくて。本当に,ここ最近の展開が鬼過ぎる気が。

聖剣の刀鍛冶10 (MF文庫 J み 1-18)

聖剣の刀鍛冶10 (MF文庫 J み 1-18)

  • 作者: 三浦勇雄
  • イラスト:屡那
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/11/20
  • メディア: 文庫

最後の力を振り絞り魔剣化を果たし,そして剣のまま元に戻らなくなってしまったアリア。そのアリアと,アリアを復活させる一縷の望みとなる情報を携え独立交易都市に帰ってきたセシリーを待っていたのは,彼女にとって衝撃的な事実だった。

「それ以来,彼らの行方が知れない」(P.24)

最近独立交易都市で頻発する地震。その原因を探るために協力していたルークとユーインの2人が,帰ってきていないことを知らされる。その間,約10日。
状況的には絶望。しかしルークを信じるセシリーは彼らの救出に向かうのだった。そして,その火山の奥底で,ルークが,セシリーが目にするものは。そして訪れる運命の時・・・・・・。

 

発売前に表紙が話題になりましたが。でも,一番強烈なのは,最後の挿絵だと思う私ですwあれは,攻めすぎだよなぁ。凄く悲しいシーンなのに,涙が出るのに顔が笑えてくる,という希有な体験をさせて貰いました。

さて,『聖剣の刀鍛冶』10巻です。大台突破!アニメの方は,ごにょごにょって感じでしたが,原作の方はまさに絶好調,という感じですね。とはいえ,先行きを考えるとセシリーを待ち受けているものは悲しみしかなさそうなのが玉に瑕ですが。

さて,この巻の主役は,作者の言うとおりにルークでしょうね。火山に閉じ込められ,ヴァルバニルの末端と戦い,疲弊していくルーク。絶望的な状況の中,泥水をすするような覚悟で生き延びようとするルークが何とも。彼を支えたのが,「彼女との約束を果たす」と言う事。自分の命がもう長くないことを悟っていながら,それでもそれを守る,と言う決意。何と心打たれるか。ユーインとの会話の中で,セシリーに対する思いが出てきたのには,にやにや。巻が進むにつれて,セシリーに対する思いがどんどん深まってきているのがハッキリわかるのが良いですね。ただ,ルークは自分の先がもう無いことがわかっている。自分が死して後,自分がセシリーの十字架になってはいけない,と言うルークの思いがよくわかるのがまた切なかったです。ユーインの言い分ももちろんわかるけれども,ルークの考えもわかりますからね。難しいなぁ。

さて,この巻ではいよいよ封印まで辿り着いた,と言う事で,ますますヴァルバニルの復活が近いことを感じさせてくれました。

「まさか・・・・・・聖剣だけでなくヴァルバニル自身も弱体化しているというのか?」(P.176)

この一文が非常に気になるところ。このルークの予想が,対ヴァルバニル戦に絡んで来そうな気がしました。

とはいえ,ヴァルバニルが大陸最悪の悪夢であることは変わらず。弱っていた封印を強化することになったのですが。ココで失ったものがあまりに大きすぎる。ルークとしては覚悟していたこと。そして,リサにとっても覚悟して,それでもルークを支えていくと言う思いがあるのでしょうが。ただ,それを知らされていなかったために,思いも寄らない形でそのことを知ってしまうセシリーの気持ちを思うと。ラストの2文。このあまりに重すぎる事実に,自然と涙があふれてしまいました。

さて,何とかルークやユーインを救出することに成功したセシリーたち。しかし,アリアは未だ傷ついたまま,復活していません。と言う事で,次はアリアの復活がメインになってきそうです。果たして,魔剣を復活させるという隕鉄を見つけることができるのか。そして,アリアはどのような形で復活するのか。非常に気になるところです。この巻では,イマイチセシリーの活躍が少なくて,その点に関しては不満がありましたので,是非ともセシリーには大活躍を期待したいところです。とはいえ,ルークがもう戦力として数えられない以上,彼女がますます強くなるしか道はないのですが。

また,前巻から登場した魔剣・銘無し。帝政列集国のものでありながら,セシリーとアリアの行く末を見守るために,セシリーについてきますが。果たして,一体ナニを考えているのか全く読めない分,今後どんな役割を果たすか注目です。

このまま進むと,セシリーにとってこの巻は幕開け。今後,さらに過酷な運命が待ち受けていそうな気がします。彼女はその運命に,時には傷つきながらも前を向いて突き進んでいきそうですが。ただ,せめて最後は,笑っていて欲しい。そう願うばかりです。


ブログパーツ
nice!(16)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『ドラゴンブラッド』/伊上円 [メディアファクトリー]

第6回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作。うん,久しぶりに「新人だなぁ」という作品でした。最近の新人さん,そもそもデビュー作が素晴らしすぎですよw

ドラゴンブラッド (MF文庫J)

ドラゴンブラッド (MF文庫J)

  • 作者: 伊上 円
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/10/21
  • メディア: 文庫

 

2年前の事故で瀕死の重傷を負った天音櫛秋良(あまねぐし・あきら)は,悪魔と契約し,人間を捨てることで死の淵から助かる。そして,現在高校2年生。同級生・凰楼院藍(おうろういん・あい)と一緒に授業をサボったり,近所のお姉さんで担任の悠錐在歌(ゆうきり・あるか)に心配されたりしながら暮らしていた。
そんな彼の町には一つの怪奇事件が起こっていた。「超能力事件(ケースP)」と呼ばれるその事件。その解決を依頼された秋良は,情報収集を始める。そんな彼が出会ったのは,自称殺人鬼の全無壊世(うつなし・かいぜ)と出会う。二人は協力しながら,事件を解決するために奔走する。果たして,二人は事件を解決することができるのか?

と,いかにもネーミングセンスからして極度の厨二病ですが,設定もキャラクターも見事なまでの厨二病小説でした。うーん,あまり悪いことは書きたくないですが,正直イマイチでした。確かに,最近の新人賞受賞作のレベルが総じて高い,という事で,見る目が厳しくなっている,と言う事をさしひいても,イマイチという評価を免れ得ないかな,と。

いや,厨二病ライトノベルをやるんなら,それでもいいと思うんですよ。その分,それこそ『under』みたいに突き抜けてくれたら。ただ,この作品の残念なところは,そこまで突き抜けていないところです。主人公のキャラが特によくなかったでしょうか?もう少し痛々しいキャラだとよかったんですけどね。使う能力的にも,目新しさが無かったですし。ここに+αのなにかがあるとよかったと思います。

まぁ,言い出せば残念なところはたくさんあるのですが。一番を上げると,展開でしょうか。もう少し整理するとよくなると思います。というのも,半分くらいでラスボスが出てくるのはまぁ良いのですが。3人目の仲間が出てくるのはもう少し早かった方が良かったかなぁ,と。そのためか,最後の戦いがあっさりしたものとなってしまって,イマイチ緊迫感に欠けるものになってしまったという感じがします。自分の手の内を見せて,能力がより優れた方が勝ち,というのは面白味に欠けてしまいます。

あと,これは個人的な思いですが,ラストのあの展開は止めて欲しいですね。『灼眼のシャナ』アラストール顕現というか,『under』の反翼の魔女の登場というか。これやられると,主人公の存在がかすんでしまうと思うんですよね。より強大な力を持つ存在を表したいのかも知れませんが。異能バトルってのは,自分の異能をより巧みに操って,その良さを引き出して戦うところに見所があると思います。だからこそ,「より強い能力を持つものが弱いものをたたきつぶす」という構図は,物語の幅を狭めてしまうのではないかと。

ただ,それが乱発できないように『灼眼のシャナ』では,自らを宿したフレイムヘイズを殺してしまう,という制約を貸しているのですが。この作品ではその制約がないっぽい,というのが残念です。むしろ,傷が完全に回復したりと良いことづくめ,というのは。

新人さんですし,まだまだこれからかな,という感じがします。デビュー作が「うーん」というできであったものの,次の作品で一気に化けた作者もいらっしゃいますし,今後がんばって欲しいなぁ,と思います。


ブログパーツ
nice!(23)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『黒のストライカ』/十文字青 [メディアファクトリー]

十文字青さんの新作です。

黒のストライカ (MF文庫J)

黒のストライカ (MF文庫J)

  • 作者: 十文字青
  • イラスト:硯
    出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/10/21
  • メディア: 文庫

 

かつて,あまねく夜を統べ,闇に名をはせた一族である夜魔(ゴーダン)。その最後の生き残りである高夜椋郎(たかや・むくろう)は,日本で普通の高校生として暮らしていた。しかし,ある日元臣下の吸血鬼(ヴァンピール)の同級生・蔵島翠子と彼女を狩ろうとする吸血鬼狩り(エリミネーター)の西神麗の戦いに巻き込まれたことにより,状況が一変する。
主として椋郎に使えようとする変態の翠子や,命を助けられたと勘違いしてその恩に報いようとする麗。二人に追い回され少しずつ日常が変わっていく椋郎。そして,彼を狙う敵も現れて。

 

帯にあるように,ジャンル的には「学園異能ラブコメ」です。キャラクターの造形などは,いつもの(と言うほど,氏の作品を読んでいるわけではない気もしますが)十文字青キャラでした。

この巻では,ストーリーと言うよりもまずはキャラクターの魅力で惹き付ける,という感じだったでしょうか。主人公の椋郎は,夜魔の生き残りであるため,妙にプライドが高いところがあるのですが,でも人間の中に生きるためにそれを抑えて暮らしています。ただ,周りにつきまとう存在が現れたことで,その仮面が少しずつはげていくのが面白かったです。自分に傅く翠子や麗には強く当たるけども,幼なじみの”しはる”には頭が上がらなかったり,しはるの事になると,見境がなくなったり。意外なものが苦手だったりと,妙に人間的なキャラだなぁ,と感じました。

個人的に気に入ったのは,変態の吸血鬼,翠子です。椋郎を宗主と認めてからは,彼につきまといます。が,その度合いが変態過ぎて笑いました。一言で言うと,ドMなのですが,隠そうとしながらも隠れていない変態の願望が面白かったです。椋郎も対処に困っているようでしたが,そりゃそうだろうなぁ,と。でいて,最後の場面では妙に積極的になるところとかもあり。見ている分には面白いですが,近くにいたら鬱陶しそうだなぁ,と思いました。

ストーリーとしては,序章という感じでしょうか。いきなり敵の存在が知れ,敵の幹部クラスが出てきたのには驚きました。今回,椋郎は歯も立たなかったので,さらなるパワーアップが必要。新しい僕の存在がありましたが,これからさらに仲間を増やしてハーレムを作っていき力を付けていく,という感じになりそうですね。この辺は,主人公を夜魔の宗主としたことで,自然な展開ですね。敵も敵で,かなりの大勢力であるような描写が見られ,今回はあくまでも戦いの火花で,今後激しい戦いに発展していきそうな印象を受けました。

と言う訳で,今後に期待が持てるようなシリーズかなぁ,と言う感じがしました。一体どこまでシリーズが大きくなっていくか。今から2巻が楽しみです。


ブログパーツ
nice!(12)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『変態王子と笑わない猫。』/さがら総 [メディアファクトリー]

第6回MF文庫Jライトノベル新人賞・最優秀賞受賞作品です。タイトルに釣られましたwでも,良い意味で裏切られましたねw

変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)

  • 作者: さがら総
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/10/21
  • メディア: 文庫

横寺陽人(よこでら・ようと)は女子水泳部の部活動風景を覗くことができるポイントがあるから陸上部に入った,と言うほど頭の中は煩悩まみれの高校2年生。しかし,部活動熱心だと勘違いした(実際は,のぞきのためにがんばっていた)前部長により,部長に指名されてしまう。そして,彼は人並み以上の建前のために,それを受けてしまう。
建前のせいで,自由に生きられない陽人は,「願い事をすると,お供え物と引き替えに,いらないものを他人に押しつけてくれる」という笑わない猫像に,自分の建前がなくなりますように,とお願いをしようと決心。猫像の前で,「本音をもう少し表に出なくなるようにしたい」と願う少女,筒隠月子(つつかくし・つきこ)と出会う。
それぞれお願いをしたら,願いは叶ったのだけれども,建前のなくなった陽人は,本音をしゃべってしまうために,頭の中の煩悩をそのまま離してしまい,「変態王子」の二つ名を得ることに。そして,月子も表情を失ってしまう。
困った二人は,何とかして,失ってしまった建前と本音を取り返そうと,協力することに。二人は,求めるものを取り戻すことができるのか?

 

 

いやぁ,てっきり変態王子と呼ばれる変態が,その字をほしいままに活躍する話かと思ったら,心が温かくなるような,素敵なラブストーリーでしたね。本当に,良い意味で裏切られました。

まず,個人的によかったと思うのが文章。適度にひねられた文章は軽すぎることがなく,しかし重すぎることもなく,すらすらと楽しんで読むことができました。ある意味,『涼宮ハルヒ』的な印象を持ちました。 何となく,ですが。

そして,特筆すべきは,多くの方が述べておられますし,審査員の方も言及されていますが,キャラクターの魅力でしょうね。メインになるキャラクターは4人。主人公の変態王子。その相手役の筒隠月子。陸上部の部長の鋼鉄の王(女性)。同級生のお嬢様・小豆梓です。

主人公の変態王子ですが,まずこれがよかったですね。建前を失ったことで,自分の煩悩を素直にぶちまける姿がとにかく面白かったです。確かに,自分の思っていることをすぐに口にしてしまうのは,生きにくいだろうなぁ,という感じがしました。でも,端から見ていると面白いですよねwところが,この主人公,ただの変態じゃなくて,意外と良い奴で。建前がないから,すぐに本心をぶちまけちゃうのも,良い方に影響していましたね。自分の思っていることを真っ直ぐにぶつけるからこそ,その変態差に引きながらも,惹かれるものが現れる,と言ったところでしょうか。

ヒロインの月子は,無表情なのに,なんであんなに可愛いのか,とwその大部分が,隠していない陽人に対する好意(ただし,陽人は気づいてないっぽい)なのでしょうが。陽人がどうして自分に力を貸すのか,という疑問が浮かんで
「わたしのーーーいえ,わたしの本音のためですか」(P.242)
と言っちゃったりするのがもう,可愛いというかw最後の決断もよかったなぁ,と思いましたね。

小豆梓も可愛かったですし。そして,鋼鉄の王。これがもう意表を思いっきり突く形のものを秘めていました。これには大爆笑させて貰いました。ここは,ちょっと変化球的な使い方をしていて,非常にうまいなぁ,と思いました。

それと,キャラクターの魅力で隠れがちな気もしますが,ストーリー自体がおもしろかったと思います。主人公が変態,と言う要素がなくても,ラブコメとしても十分に楽しめるないようだったと思います。キャラが立っているからストーリーが引き立っている,と言う面もあるとは思いますけども。ただ,時折出てくる言葉が,笑いも切なさも含めて結構印象に残りました。

これ,タイトルに釣られる人もいると思いますが,タイトルで敬遠しちゃう人が多いような気がします。プラスマイナスで考えると,どっちが大きいのか,という感じです。作者は「ハートフルロマンチックピュアラブ青春もの的なストーリーと思っている(言い過ぎだけど)みたいに後書きに書いていますが,私も同意ですね。優しくて,暖かくて。ラブが満ちた素敵な作品だと思います。本当に,最近出てくる新人さんは凄いなぁ,と感心してしまいました。

終わり方としては,続けられそうな感じもしました。ただ2巻以降,笑わない猫の設定をどう物語に生かしていくのかなぁ,と言う事を考えると,ここでキレイにおわってしまった方が良いのかなぁ,と言う気がします。いや,純粋に続きが読みたい,と言う気持ちは結構ありますけどねw

おススメです。


ブログパーツ
nice!(14)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『この中に1人、妹がいる!』/田口一 [メディアファクトリー]

と言うわけで、予告どおり。tamapu-さんのコメント読んで、イラストに惹かれたのですが、素晴らしいイラストでしたw

 

この中に1人、妹がいる! (MF文庫J)

この中に1人、妹がいる! (MF文庫J)

  • 作者: 田口一
  • イラスト:CUTEG
    出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/08/21
  • メディア: 文庫

 

 

世界的なグループ企業、帝野グループの一人息子・帝野将悟。彼の父であり、社長の熊五郎の逝去に伴い、彼は父の遺書に従って、グループを引き継ぐ決意をする。父は、グループを引き継ぐための条件として、将悟が高校を卒業するまでに愛する女性を見つけ、生涯の伴侶とすることを出していた。
そして、その条件を叶えるために、将悟は政財界のお嬢様達が多く通う深流院学園(みりゅういんがくえん)に編入することに。ところが、ここで重大な事態が判明。
なんと、彼には生き別れになった妹がいたのだ!そして、妹は兄を慕っていた。そして、彼女は、将悟に知られぬまま将悟の恋人になり、結婚して幸せな家庭を築く、と言うのだ。
グループを引き継ぐために、将悟は恋人を作らなければならない。しかし、それには妹が誰か見極めなければならない。果たして将悟は、妹を見つけ、恋人を作ることができるのか?

 

変則ラブコメ、というあおりが紹介文に付いていますが、まさに変則ですねwまさか、こういうアイディアで来るとは思いませんでした。これは設定の勝利というか。素晴らしいと思います。

内容の方ですが、これは何とも説明するのが難しいwまず、こういうラブコメものだと、悪い言い方をすると、文章が雑な感じになったりしがちと言う印象があります。しかし、この作品はそんな事がなかったのが好印象でした。落ち着いている、と言うか、丁寧に書いているなぁ、と。

そして、ラブコメ作品で重要となるキャラクターですが、これはテンプレート的でしたね。扉絵では、主人公とともに4人の女性が描かれていますが、今回メインになるのは2人だけ。他の2人は顔見せ程度、という感じでした。
で、今回主に活躍する2人のうちの1人、鶴眞心乃枝(つるま・このえ)ですが、いかにもお嬢様、と言うキャラでした。しかし、もう1人のヒロインと張り合ったり、乗せられやすかったり、意外とむっつりスケベだったり、と何とも不思議なキャラでした。悪く言えば、キャラが分散している感じ、と言うかw
もう1人の神凪雅(かんなぎ・みやび)は、はじめはつんで、親しくなればなるほどでれてくる感じ。ただ、途中からデレデレになるので、ツンデレではないですね。ツインテなのにw

こういう作品では、あざとい場面があるのがお約束w(何かの拍子に女性を押し倒してマウントポジション。手は柔らかいものをつかんでいる、とかw)その例の漏れず、この作品もあざといなぁ、と感じる場面もあります。そこまで酷くあざとい、と言うわけではないと思いますが。この辺をどう感じるか、がこの作品の評価を分けそうです。私は、「ちょっとあざといなぁ」と思うものの、文章で何とか許せる、という感じでした。

全5章仕立てで、2人のうち、どちらが妹かを予想しながら話が展開していく感じでした。2人のヒロインは、いろいろな縁で主人公に惹かれて、何とか主人公に好きになって貰おう、とあの手この手。しかし、主人公はもしかしたら妹かも知れない、妹を好きになるわけにはいけない、と悩む、と言うパターンですね。最後は、主人公の行動も変わるのですが、そのことで2人との過去が明かされて、と。

巻数表記はなかったですが、これは続きそうな感じですね。妹は誰かまだ分からず、妹の脅威は去ってないわけですし。それに、巻頭カラーに出てきた国立凜香(くにたち・りんか)と嵯峨良芽依(さがら・めい)は十分に活躍している、とは言い切れないわけですし。彼女たちのどちらかが妹、と言う可能性もないわけではない?(芽依は年上ですがw)

個人的には、結構お気に入りです。何より、イラストが素晴らしいですしねwさらに素晴らしいことに、この素晴らしいイラストが、結構ある(今数えたら、カラー除いて10枚)ある、と言うのが素晴らしい!素敵なイラストをたくさん堪能させて頂きましたよwこれだけで、また多少のことは許せる、と言うかw

続きが出るなら読みたいなぁ、と思える作品でした。


ブログパーツ
nice!(18)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

『白銀の城姫』 3』/志瑞祐 [メディアファクトリー]

と言う訳で、ライトノベルの感想3連発です。今回は、これ。

白銀の城姫 3 (MF文庫J)

白銀の城姫 3 (MF文庫J)

  • 作者: 志瑞祐
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2010/07/21
  • メディア: 文庫

 

あまり感想書かれない気がしたのでorz

中世を舞台にし、そこに城姫(ベルクフリート=城に宿って無双の力をふるうことができる女性)という要素を加えたファンタジー要素あふれる本シリーズでしたが、この巻にて完結となります。いやぁ、帯見て「遂に激突」とか「私の剣は迷わない」とか、いやな香りがぷんぷんして後書きを読んだのですが、見事に打ちきりでした。前の巻で、エリッセがあっという間に復活したのに違和感を感じたのですが、こういうことですか。『荒瀬はるか、容赦なし』も3巻まで出たし、3巻がMF文庫Jの打ち切りライン、と言うことでしょうか。

と言うことで、これで完結となってしまったためか、展開が急すぎてあっけにとられてしまいました。師匠が最強の城姫つれて戻ってきたかと思ったら、あっという間にわるいやつらを全滅させて。と思ったら、最強の城姫があっさりやられて、師匠もあっさり負けて。で、「最終決戦だ!」とかやられても、読んでる側としては、( ゜Д゜)ぽかーん としか反応がしようがないw

最終決戦自体は、なかなかに楽しめたのですが、これまた結末があっけなさ過ぎだろう、と思う展開でした。そもそも、主人公と鉄仮面自体、宿敵と言うほど因縁があるわけでもないので、鉄仮面を倒したからといって、なんの感慨もわいてこないのは残念。第一、鉄仮面ってのは主人公と何かしら因縁がある人物が、自分の正体を隠すために使うから、仮面の下の正体が明かされたときに意外性、と言うか「やっぱりねw」という感情が生まれるのであって。鉄仮面を砕いても、相手は知らない人でした、と言う展開はどうなのかと。正直、鉄仮面の下が師匠だった方がまだ盛り上がった気がします。

オチもですね。結局、リンツ(主人公)の気持ちはシャトレアにあるんだろう、と言うのはよく分かりましたが、エリッセに対する結着とかがあるわけでもないので、非常に中途半端に感じました。エリッセとシャトレアのガチンコのぶつかり合いが王少しあった方が良かったと思いました。

と、何か、不平不満が多くなってしまいました。読んでいておもしろかったんですけどね。それだけに、今回の打ち切りが残念で仕方ないですし、それに対して不満がわいてきてしまいました。この展開にするにしても、あと2冊、欲を言えば3冊使えればまた変わった展開にできた、と思ってしまいました。が、そこまで売り上げもよくなさそうですし、仕方ないことですね。

「おもしろいんだけども、何か足りない」と思っていたシリーズですが、結局その足りないものを埋められずに打ち切られてしまった、と感じました。本当にもったいない。アイディアとかはおもしろかったと思うだけに。

足りないものについて。読書メーターの感想を見ていて、自分なりに考えたことがあります。それは、作者の城姫に対するアプローチがイマイチ弱かったのか、と言うこと。確かに、城に対する歴史、うんちくはあります。そして、その城の特色を生かした固有兵装というアイディアはあります。しかし、そこでとどまっていて、城に対する情熱が足りなかったのではないか、と。作者に言わせたら、「そんなことないよ」と言われそうですが、作者の思いが十分に伝わらなかったかなぁ、と。

後、読者側としてもそれぞれの建造物に対する知識が深いわけではないのもネックだったかと。確かに、モンサンミッシェルとかコロッセオ、バスティーユなどは分かります。しかし、シャトレアの宿る「ノイシュバンシュタイン」や最強の敵として登場した「ゴーメンガースト」(今調べたら、イギリスの作家の作品なのですね)と言われても、私の無知無教養のせいでぴんと来ませんでした。

 

繰り返しになりますが、期待していたシリーズだけに、これで完結、というのは寂しいです。日常パートはコメディチックではあったものの、そのほかのパートではちゃんとシリアスなファンタジーしていて好きだっただけに。とはいえ、デビュー作である『やってきたよ、ドルイドさん!』とは全くタイプの違う作品でありながら、ココまで書けた、というのは素直に素晴らしいことだと感じました。純粋に、新作に期待したいと思います。


ブログパーツ
nice!(16)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の10件 | 次の10件 メディアファクトリー ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。